研究課題/領域番号 |
26860167
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
柏木 仁 旭川医科大学, 医学部, 助教 (60510609)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 血小板 / プロスタグランジンF2α / EP3受容体 / TP受容体 / 受容体欠損マウス |
研究実績の概要 |
血小板の機能調節には、血小板活性化作用を示すトロンボキサン(TX)A2と抑制作用を示すプロスタグランジン(PG)I2のバランスが重要と考えられている。一方、研究代表者は、PGF2αがアデノシン二リン酸(ADP)により惹起された血小板凝集を促進することを見出した。 これまでの検討により、PGF2αによる血小板凝集促進作用は、PGF2αの受容体であるFP以外を介したものであることが示唆された。そこで、PGF2αの血小板における標的受容体を明らかにするため、プロスタノイドの各受容体を欠損するマウスから血小板を調製し、PGF2αのADP凝集への促進作用が消失するか否かを検討した。その結果、PGF2αの血小板凝集促進作用が、PGE2受容体サブタイプの一つであるEP3とTXA2受容体のTPの欠損マウスにおいて有意に減弱し、EP3とTPの両欠損マウスにおいてはほぼ完全に消失した。また、PGF2αを単独で血小板に添加すると、血小板の形態変化を示す凝集波形が確認できるが、TPの欠損マウスにおいてはこの波形が消失した。続いて、マウスの尾の先端を切断した際の出血時間を測定し、PGF2αの作用が生体で果たす役割をin vivoで解析した。その結果、PGF2αの尾静脈投与により、出血時間は有意に減少した。 以上の結果より、PGF2αはEP3とTPを介して血小板凝集を促進し、その作用は止血機構にも影響を及ぼしている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PGF2αの血小板凝集促進作用が、EP3およびTP欠損マウスにおいて減弱したが、どちらの欠損マウスにおいても完全には消失しなかった。そこで今回、EP3とTPの両欠損マウスを作製してPGF2αの血小板凝集促進作用が消失するか否かを検討したが、予想通りPGF2αの作用がほぼ完全に消失していることを確認できた。また、in vivo解析系を用いた検討においても、PGF2αの投与により出血時間が短縮するという推測通りの結果が得られた。 PGF2αが血小板凝集に及ぼす作用とその機序について、概ね予想通りの結果が得られており、本研究は順調に進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
PGF2αのin vivoでの役割をより詳細に検討するため、血栓形成モデルを用いた解析を行う。具体的には、アラキドン酸を投与して微小血管に血栓を形成させ、その際の致死率や血栓形成の程度がPGF2αにより変化するか否かを検討する。 現在、PGF2αおよびその誘導体が分娩時や緑内障治療薬として用いられている。これらPGF2α製剤が血小板機能に影響している可能性を検討するため、PGF2α誘導体がPGF2αと同様に血小板凝集を促進するか否かを検討する。
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