研究実績の概要 |
本研究は、生理活性脂質の1種であるリゾホスファチジン酸の第4受容体(LPA4)特異的アンタゴニストが2型糖尿病の新規創薬ターゲットとなりうると考え、生体への適用が可能な特異性・親和性に優れたLPA4アンタゴニストを得ることを目的としている。平成26年度には、東京大学創薬機構保有の化合物コアライブラリー(約1万のサンプルから構成される)より37のリード化合物を得た。平成27年度にはこれらの化合物に加え、LPA4に対するアンタゴニスト活性が報告されている化合物の活性評価を行った。本スクリーニング系では、リゾホスファチジン酸に対する応答を示さないラット神経芽腫細胞株B103細胞にLPA4を安定的に過剰発現させ(B103-LPA4細胞)、LPA-LPA4-Gq経路による細胞内カルシウム応答の化合物添加による阻害効果を指標としてアンタゴニストの同定を進めた。BrP-LPA (ChemMedChem, 2007, 2, 679-690), H2L 5987411 (J. Biol. Chem., 2009, 284, 17304-17319) は、IC50がそれぞれ0.3 microM, 1.5 microMの化合物として報告されている。BrP-LPA, H2L 5987411 に加え5つのH2L 5987411類縁化合物の計7化合物を評価した結果、アンタゴニスト活性は検出できなかった。この結果は、実験に用いたシグナル測定系や細胞株の違いに起因すると考えられる。 今後は、候補化合物で認められているアンタゴニスト活性が受容体への直接結合によるものか検証する。具体的には、LPA4を過剰発現している細胞の膜画分を生化学的手法によって分離し、放射線同位体標識されているリゾホスファチジン酸の膜画分への結合を各候補化合物が競合阻害するか否かによって評価する計画である。
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