研究課題
本年度は平成26年度に確立したセルフリーの実験系を用いて、アミノ酸トランスポーターによって取り込まれたアミノ酸がmTOR (mammalian/mechanistic target of rapamycin) を活性化する分子機構の解析を行った。平成26年度の結果より、培養細胞から単離したリソソーム画分にサイズ排除クロマトグラフィーによって分画した細胞質画分を加えると、画分によってmTOR活性を促進または抑制することが示された。この結果は、これまでに報告されているように、細胞質にmTOR活性を調節する様々な因子が含まれていることを示しており、このセルフリーの実験系は細胞内でおきている現象を再現できることが確認された。アミノ酸の中でも非常に強くmTORを活性化するロイシンに着目した研究も並行して行った。本研究では様々なロイシン誘導体を用いて、がん細胞において細胞内へのロイシン取り込みを担う、がん細胞特異的に高発現するアミノ酸トランスポーターLAT1の基質認識とmTOR活性の相関についての解析を行った。その結果、mTOR活性化に必要な構造はLAT1に輸送されるために必要な構造よりも厳密なものであり、LAT1自体はロイシンの情報を感知してmTORへ伝達する役割は担っておらず、細胞内にはmTORへとロイシン情報を伝達する他の分子または機構が存在することが示唆された。今回、トランスポーターからmTORへのアミノ酸情報伝達機構の解明までは到らなかったが、本研究で得られた知見や確立したセルフリーの実験系は、細胞におけるアミノ酸感受と成長・増殖の関係を理解するために大いに役立つことが期待される。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (3件)
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