研究課題
当研究課題では、血管内皮細胞におけるERK5の活性化が血管石灰化病変の形成に関与するか否かについてERK5内皮特異的欠損マウスを用いて検討することを目的としている。前年度すでに、HMG-CoA還元酵素阻害剤の一つであるピタバスタチンが、培養ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)においてERK5を活性化し、一酸化窒素合成酵素(eNOS)の発現を増加させることを明らかにし報告している。今年度の研究ではさらに、ピタバスタチンがNOS阻害剤(L-NAME)誘導性の内皮障害モデルマウスにおいて内皮保護効果を示し、糖尿病がリスク因子であることが知られている急性大動脈解離の発症を抑制することを明らかにした。さらに、本モデルではL-NAMEによって血管内皮細胞における内皮細胞マーカー、VE-カドヘリンの発現低下が観察され、内皮間葉転換が起こっている可能性が示唆された。培養細胞においても一酸化窒素の低下がVE-カドヘリンの発現低下を惹起し、ピタバスタチンはeNOS発現上昇に伴ってVE-カドヘリンの発現を増加させることを明らかにした。これらの知見は第89回日本薬理学会年会のシンポジウムにおいて報告した。また、これらの結果から、ピタバスタチンはERK5の活性化を介して内皮間葉転換を抑制し得ることが明らかとなった。一方、高リン刺激はrho-kinase依存性のcyclophilin A自己分泌経路が、ERK1/2活性化を惹起し、骨芽細胞様細胞への分化を促すことによって血管石灰化を引き起こす可能性を明らかにし、第47回日本動脈硬化学会総会・学術集会などで報告した。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
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