研究課題/領域番号 |
26860175
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
毛利 彰宏 名城大学, 薬学部, 助教 (20597851)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | うつ病 / 動物モデル / 社会的敗北ストレス / 隔離飼育ストレス / 行動解析 / マイクロアレイ解析 / ユビキチン-プロテソーム系 |
研究実績の概要 |
うつ病は、精神疾患の中でも発症頻度が高く、長期治療を必要とし、経済的損失は非常に高い。うつ病の克服は産学挙げて、対策すべき課題である。本研究の目標はうつ病におけるユビキチン-プロテアソーム系の関与を臨床・基礎研究のクロストークにより明らかにし、ユビキチン-プロテアソーム系を標的としたうつ病に対する新しい診断バイオマーカー・抗うつ薬・うつ病モデル動物の開発を行い、うつ病を克服することである。本年度は被験マウス(C57BL6系統)を体格が大きく攻撃性の高いマウス(ICR系統)に暴露による社会的敗北ストレス、被験マウス(C57BL6系統)をケージに一匹で飼育する隔離飼育ストレス、によりうつ病モデル動物を作製した。うつ病患者に認められる社会性の低下の指標となる未知マウスに対する社会性行動試験、意欲の低下の指標となる強制水泳試験、易疲労性の指標となる未知マウスの侵入に対する攻撃行動試験、精神運動性制止の指標となる新奇環境下における行動量測定試験などを用いて評価すると共に、不安の指標となる高架式十字迷路試験、および認知機能の指標となる新奇物体認知試験・Y迷路試験による行動学的評価を行った。幼若期に社会的敗北ストレスを負荷したマウスでは社会性行動の低下が認められた。一方、幼若期から隔離飼育ストレスを負荷したマウスでは自発運動の増加、攻撃性および衝動性の増加、および認知機能障害が強く認められた。すなわち、これらうつ病モデルマウスの行動表現型に違いが認められた。これらうつ病モデルマウスの遺伝子発現について、タンパク分解を制御するユビキチン-プロテアソーム系関連分子を中心に網羅的に解析を行うため、ストレス負荷後に脳および血液サンプルを採取し、DNAマイクロアレイ法による遺伝子発現解析用のサンプル調整を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
うつ病動物モデルはうつ病患者が示す状態をできる限り再現することが重要であり、その評価には行動表現型や神経化学的変化などを指標とする。身体とともに精神が発達する学童・青年期はいじめなどの社会的ストレスに対して脆弱であり、その後に発症するうつ病などの精神障害は、成人後まで遷延化したり、再発したりする場合が多い。本研究では、学童・青年期において問題視されているいじめを想定した社会的ストレスを被験マウス(C57BL6系統:3週齢)に攻撃性の高いマウス(ICR系統)を暴露することで再現した。また、社会的な孤立を被験マウス(C57BL6系統:3週齢)を他のマウスと接触させない隔離飼育ストレスにより再現した。その結果、幼若期に社会的敗北ストレスを負荷したマウスでは社会性行動の低下が認められた。一方、幼若期から隔離飼育ストレスを負荷したマウスでは自発運動の増加、攻撃性および衝動性の増加、および認知機能障害が強く認められた。うつ病の症状は様々な要因によって変化するため、複雑多岐にわたる。これらうつ病モデルマウスの行動表現型に違いが認められたことは、うつ病の症状の複雑性を再現できたと評価できる。これらうつ病モデルマウスのストレス負荷後に脳および血液サンプルを採取し、DNAマイクロアレイ法による遺伝子発現解析用のサンプル調整を行った。網羅的な遺伝子発現解析の結果から、タンパク分解を制御するユビキチン-プロテアソーム系関連分子を中心に解析を行うことは様々なうつ病に共通する機序を明らかにすることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
DNAマイクロアレイ法による遺伝子発現解析により見出したユビキチン-プロテアソーム系関連分子およびその標的タンパク質がうつ病の発症・病態にどのようにかかわるか、社会性敗北ストレス負荷マウスなどのうつ病モデル動物を用いて行動薬理学的・神経化学的検討を行う。すなわち、ユビキチン-プロテアソーム系関連分子およびその標的タンパク質に作用する阻害剤もしくは活性化剤などの薬物を新規抗うつ薬として評価・開発を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はマイクロアレイ解析のサンプルを作製したが、その解析の実施まで至らなかったため、その実施に対する使用額が次年度に繰り越された。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の通り、マイクロアレイ解析を次年度に実施する以外に使用計画に変更はない。
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