研究課題
本研究は脳微小出血の発症機序として(1)赤血球の脳血管内皮細胞への接着と(2)それに伴う血液脳関門機能低下による赤血球の血管外滲出の2つの要因を考え、これらに影響を与えうる生理活性物質と血球細胞-脳血管内皮細胞および脳ペリサイト-脳血管内皮細胞の細胞間相互作用を明らかにすることを目標とする。脳微小出血数と血中濃度が相関することが報告されたCRP、IL-18、IL-6を脳微小出血のリスクファクターであると捉え、これらの脳血管内皮細胞上の血球接着分子(RAGE、CD36、ICAM-1、VCAM-1)発現量と血液脳関門の障壁能への作用を検討した。CRP、IL-18、IL-6はこれらの血球接着分子発現量に影響をおよぼさなかった。一方でCRP、IL-18は血液脳関門の障壁能を高めることから、これらが直接的に血液脳関門破綻に寄与しないことが明らかとなった。また、この作用は脳ペリサイトとの共培養系でも同程度に認められたことから、脳血管内皮細胞-脳ペリサイト間の相互作用の寄与は小さいと考えられた。また炎症性サイトカインであるIL-1βおよびTNF-αは脳血管内皮細胞の血球接着分子CD36、ICAM-1、VCAM-1発現量を増加させたので、これらを血球接着の誘導物質として使用し、血球細胞の脳血管内皮細胞上への接着が血液脳関門の障壁能へおよぼす影響を検討した。IL-1βおよびTNF-αによって血球接着分子発現が誘導された脳血管内皮細胞に血球細胞(J774.A1細胞)を加えると、J774.A1細胞の脳血管内皮細胞上への接着が増加した。このときの脳血管内皮細胞のタイトジャンクション関連タンパクの発現量を調べると、J774.A1細胞存在下でoccludinの発現量低下が顕著である傾向がみられた。従って、血球細胞と脳血管内皮細胞の接着が、血液脳関門の障壁能に影響をおよぼす可能性が考えられた。
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