細胞がアミノ酸飢餓や酸化ストレスに暴露されると、翻訳制御因子GCN2は翻訳伸長因子eIF2αのリン酸化を引き起こし、転写因子ATF4の翻訳亢進を介した抗酸化遺伝子群やアミノ酸合成酵素群の活性化を行う。酵母において、GCN2の活性化には、GCN1が必須であることが示されているが、ほ乳類におけるGCN1の役割はわかっていない。本研究では、アミノ酸飢餓および酸化ストレス応答に関わるGCN1のマウス個体における機能を明らかにすることを目的に、GCN1欠失マウスの解析を行った。GCN1欠失マウスは、出生後には死亡していたため胎生18.5日の解析を行った。胎生18.5日のGCN1欠失マウスは各組織の形成に明らかな異常は認められないが、体が小さく、肺胞虚脱を呈していた。このことから、GCN1欠失マウスは呼吸不全により出生直後に致死となると考えられた。また、成長遅延は胎生11.5日以降に観察されることが明らかとなった。以上のことから、GCN1は個体の発生および成長に必要不可欠であることが示された。さらに、GCN1欠失胎仔より樹立した繊維芽細胞を用いた網羅的遺伝子発現解析を行い、成長遅延および致死の原因の解明を試みている。
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