研究実績の概要 |
本研究の目的は、リゾホスファチジン酸(LPA)受容体を介した胎生期血管形成の分子機構の解明であり、本研究を通して、血管研究の進展と血管形成関連病態の治療につながる新たな知見の提供を目指している。Gタンパク質G13の血管内皮細胞特異的欠損マウスやLPA合成酵素オートタキシンの欠損マウスは全て胎生致死となるが、血管内皮細胞においてG13に共役して血管形成を制御するGPCRは未だ同定されていない。 我々はG12/13に主に共役する非Edg型LPA受容体(LPA4, 5, 6)に着目し、各欠損マウスの交配により得られた胎仔を解析した。その結果、LPA4/LPA6二重欠損マウスは胎生9.5-10.5日に血管形成不全と心嚢液の貯留を示し、胎生11.5日までに全てが胎生致死となることを明らかにした。また、LPA4/LPA6二重欠損マウスはCD31抗体によるホールマウント染色により頭部領域の血管形成不良が認められ、さらに体軸形成の異常や背部大動脈の拡張を観察した。LPA4/LPA6二重欠損マウスの卵黄嚢も著しい血管形成不良を示した。なお、LPA4/LPA5二重欠損マウスやLPA5/LPA6二重欠損マウスは正常に出生し生育した。これらの知見は、LPA4とLPA6が協調して胎生期における血管形成に重要な役割を果たすことを強く示唆している。ヒトLPA4とLPA6の胎生期血管形成における役割を解明するために、ヒト臍帯静脈内皮細胞等を用いてLPA4やLPA6の下流で発現制御される幾つかの血管形成調節因子を同定した。
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