研究実績の概要 |
核膜孔複合体(Nuclear pore complex; NPC)タンパク質は、間期で物質輸送制御に重要な役割を果たすことが知られている一方、有糸分裂期のでの役割は不明な点が多い。最近、報告者はNPC タンパク質の一つNup62が有糸分裂期の中心体形成を制御することを見出した。そこで、本研究では(1) 有糸分裂期の中心体でNPCタンパク質と結合し中心体成熟を制御する因子を同定し、その制御メカニズムを解析する、(2) 有糸分裂期におけるNPCタンパク質や中心体タンパク質の詳細な分子動態をFRAP法によって捉える、(3) 中心体タンパク質の中心体への輸送経路を解析する、(4) NPCタンパク質による中心体成熟制御の破綻と癌の悪性化との関係をin vivoで明らかにすることを目的とし、これらの解析を通してNPCタンパク質による中心体成熟制御機構の解明を目指した。 最初に述べたように、これまでヌクレオポリンは間期での物質輸送制御、有糸分裂期での紡錘体形成、染色体分離、キネトコアに関する機能は報告されてきたが、中心体制御に関する報告はなかった。本研究は、報告者が初めてNPCタンパク質の一つNup62による中心体形成制御・中心体成熟を見出したことを出発点としたところに独創性があった。有糸分裂期の中心体成熟では、Aurora-A、 Plk1等の様々なタンパク質が急激に集合することによってPCM領域が増大するが、その集合メカニズムは不明確である。報告者は本研究の解析により、NPCタンパク質の一つTprと中心体タンパク質であるAurora-Aが有糸分裂期に相互作用すること、それによって中心体成熟に必須のリン酸化酵素であるAurora-Aが中心体に局在し活性化できるという細胞生物学的に意義深い知見を明らかにできた(Kobayashi et.al., Cell Cycle 2015)。
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