研究実績の概要 |
種々の細胞膜受容体の中で、上皮成長因子(EGF)の受容体の活性制御機構が、1987年に米国のSchlessingerによって最初に解明された。EGF受容体はErbB1, -2, -3, -4の4つのメンバーからなるファミリーを形成しており、正常組織では組織の形成や維持を制御しており、がん細胞では増殖や浸潤・転移に関与している。研究代表者の所属する研究室では、免疫グロブリン様分子であるネクチンを介する新しい細胞間接着装置を発見し、この接着分子が細胞の接着とともに細胞の極性形成、生存、増殖、運動、分化など種々の細胞機能を制御していることを解明している。ネクチンの発見後、生体内にはネクチンに類似した5つのネクチン様分子(Necl-1, -2, -3, -4, -5)が存在することが見出された。そのうち、がん抑制因子として知られていたNecl-2とNecl-4がErbB3と結合し、脱リン酸化酵素PTPN13を介してErbBファミリーの細胞内へのシグナル伝達を抑制することが明らかとなっている。研究代表者は、Neclファミリーによるがん抑制機構を解析する過程で、PTPN13を介さない別のがん抑制機構を見出した。 研究代表者は、平成26年度にがん抑制因子として機能するNeclのドメイン候補を見出し、平成27年度はそのドメインが細胞内シグナル伝達を抑制するかの検討を行った。その結果、細胞内シグナル伝達を抑制するドメインを同定した。また、そのドメインと結合するErbB側の領域を同定した。
|