研究課題
小胞体ストレスセンサーとして機能するBBF2H7は、前立腺癌、膵癌、神経膠腫や肝細胞癌などの固形癌において、発現が亢進していることが確認された。固形癌におけるBBF2H7の役割を明らかにするため、BBF2H7が強く発現している神経膠腫細胞U251MGを用いてノックダウン実験を行った。その結果、BBF2H7を抑制することによってU251MG細胞の増殖、抗アポトーシス及び遊走能力が減弱することを明らかにした。BBF2H7は小胞体ストレス負荷に応答して、細胞質側ドメインと小胞体内腔ドメイン(以下略称:C末端断片)に切断される。そこで我々は、ジャンクと思われた後者がU251MG細胞の増殖に影響を与えるのをレスキュー実験により証明した。小胞体ストレス発生時に、BBF2H7 C末端断片は膜内切断を受け細胞外へと分泌される。分泌されたC末端断片は、ヘッジホッグおよびヘッジホッグの受容体であるPTCH1と結合することで、ヘッジホッグシグナルを活性化させ、細胞増殖を促進することがわかった。さらに、小胞体ストレスを起点とした新たな癌治療法を探るため、ヘッジホッグシグナルを抑制できる抗BBF2H7 C末端断片中和抗体の作製を試みた。作成できた3種のモノクローナル抗体のうち、2種のモノクローナル抗体には、BBF2H7 C末端断片とヘッジホッグおよびPTCH1との結合を阻害する機能があることがわかった。この2種の抗体をU251MG細胞の培養上清に添加したところ、細胞増殖能の低下に伴い、細胞遊走能および侵襲能力が低下することが裏付けられた。また、抗癌剤VP-16の同時投与実験により、癌細胞の抗癌剤に対する感受性が上昇していたことも観察された。以上から、今回作成したモノクローナル抗体には、ヘッジホッグシグナルが活性化している固形癌細胞の増殖を阻害させる働きがあり、がん分子標的抗体製剤としての可能性が示唆された。
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