研究課題/領域番号 |
26860197
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
殿山 泰弘 慶應義塾大学, 先導研究センター(信濃町), 特任助教 (20467393)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 器官形成 / 新規遺伝子 |
研究実績の概要 |
メダカ器官形成過程における重要性が示唆されたTMEM141に着目し、細胞レベルおよび個体レベルでの機能を明らかにすることを目的として、引き続き機能解析を実施した。 HeLa細胞において、siRNA処理によるノックダウン実験を行った結果、コントロールsiRNA処理細胞に比べて増殖率の低下が確認された。これらの細胞において細胞周期解析を行った結果、コントロール細胞と比較してG1期の割合が増加することが明らかとなった。さらに、Yeast two hybrid法により、相互作用分子の探索を行った結果、cAMP responsive element binding protein 3、Reticulon 1/3、Vesicle-associated membrane protein)-associated protein Aとの結合が確認されたことから小胞輸送に関与することが示唆された。これらのことから、TMEM141は、細胞の増殖・分化の制御機構において重要な役割を担う新規の膜小胞関連分子であることが示唆された。さらに、複数のがん細胞株において、ヒトTMEM141のアミノ酸配列の一部と同配列のペプチドが細胞増殖を抑制することが明らかとなった。 一方、個体レベルでの機能解明を目指し、ゲノム編集技術TALEN法を用いてノックアウトメダカを作製した結果、TMEM141-/-メダカの一部で脊椎の著しい彎曲が観察された。このような骨形成異常は、TMEM141-/-の全てで観察されないことから、環境要因または複数の遺伝子の多型が関係している可能性が考えられるものの、この異常は親を同じくする野生型の子孫において見られないことから、TMEM141が正常な骨形成過程に関与していることが示唆された。上記のメダカの表現型解析の一環として、メダカを用いた脂肪組織量の定量法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は、複数の遺伝子を対象として機能解析を進めていく予定であったが、研究体制や研究実施場所の変更を余儀なくされたため、器官形成過程における重要性が示唆された1種類の遺伝子のみに絞って解析を進めることとなった。しかしながら、当該遺伝子に関しては、個体レベルおよび細胞レベルの両面から解析を進め、骨形成との関連を明らかにしただけでなく、共同研究により当該分子の機能を抑制しうるペプチド群を見出すなど期待を上回る結果を得ることもできた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、特許出願手続きを行うため、学会発表等の公表を控えたが、研究期間延長申請が受理されたため、次年度は、得られた結果を別手法によってさらに確認しつつ、学会発表や論文出版により成果の公表に努める。たとえば、TMEM141-/-メダカ個体において観察された結果を確認する方法として、ゲノム編集技術を用いて、作製済の変異体とは異なるエクソンに変異を導入することにより、骨形成異常が見られることを確認することや、TMEM141-/-における脂肪組織量の増加について、今年度に確立した方法を用いて、TMEM141-/-の脂肪組織を定量的に評価することなどを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関長の死去に伴い、研究実施場所を長浜バイオ大学から慶應義塾大学・先導研究センターへと移設した。その際、メダカ飼育施設の移設と移設後の立ち上げには特に時間を要し、その間、メダカを使用する実験を控えざるを得ない状況となった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、特許出願手続きのため、関連する実験結果の公表を差し控えていたが、次年度は学会発表や論文として成果を公表する予定である。したがって、助成金は主に学会発表や論文出版の経費として使用する予定である。
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