研究課題/領域番号 |
26860199
|
研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
秋山 央子 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 基礎科学特別研究員 (80623462)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | コレステリルグルコシド / コレステロール / パーキンソン病 / GBA1 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、酸性グルコシルセラミド分解酵素GBA1を介したパーキンソン病(PD)発症の制御メカニズムを明らかにすることである。近年、GBA1の機能破綻がPD発症を引き起こすことが明らかになりつつある。申請者は最近、GBA1がグルコシルセラミド分解活性だけではなく、コレステロールへのグルコース転移活性を有し、新規生理活性糖脂質・β-コレステリルグルコシド(β-CG)を合成することを明らかにした。本研究は、GBA1によるβ-CG合成という新しい視点からPD発症の制御メカニズムの解明を目指し、1)β-CG解析システムの立ち上げ、2)疾患モデル分析、3)疾患発症の制御メカニズムへのβ-CGの関与の検証、4)疾患治療へのβ-CGの応用の可能性の検討という4つのステップで研究を進める。 平成26年度は、ステップ1に取り組み、高速液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)を用いてβ-CG解析システムを開発した。LC分離モードに、従来の順相および逆相では困難であった糖構造の異なる脂質間の分離が可能な親水性相互作用クロマトグラフィーを用いた新たな脂質分析系を構築した結果、マウス脳においてβ-CGの存在を見出した。β-CGの組織分布はこれまでほとんど明らかになっておらず、脳におけるβ-CGの存在は本研究によって初めて明らかになった。これまで、脳に存在する糖脂質は詳細に研究されてきたのにも関わらず、β-CGの存在が明らかになっていなかった原因は、β-CGが脳に多量に存在するガラクトシルセラミドに埋もれていたことが考えられる。LC/MSによる詳細な分析によって、ガラクトシルセラミドはβ-CGの約100倍存在することが明らかになった。今回開発したβ-CG解析システムを用いて、PDモデル生物を用いた脂質分析(ステップ2)に着手しており、今後詳細な解析を進めていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、GBA1によるβ-CG合成という新しい視点からPD発症の制御メカニズムの解明を目指し、1)β-CG解析システムの立ち上げ、2)疾患モデル分析、3)疾患発症の制御メカニズムへのβ-CGの関与の検証、4)疾患治療へのβ-CGの応用の可能性の検討という4つのステップで研究を進めていく。 平成26年度にはステップ1、2、平成27年度以降にはステップ3、4を実施する計画である。平成26年度終了時点で、ステップ1の実施が完了し、ステップ2の実施に着手している。ステップ2については今後詳細な解析を進める予定であるが、ステップ1で立ち上げたβ-CG解析システムによって成果が得られていることから、研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、平成26年度に立ち上げたβ-CG解析システムを駆使して、ステップ2(疾患モデル分析)を引き続き進めていく。また、ステップ3(疾患発症の制御メカニズムへのβ-CGの関与の検証)についても交付申請書に記載した研究実施計画に従って解析を進めていく。 β-CGはヒト線維芽細胞に存在することが以前に報告されているが、完全に構造決定がなされた例はない。そこで、申請者は脳由来の脂質抽出液を出発材料として、β-CGの精製および構造決定を行うことを計画している。こちらは交付申請時には計画していなかったが、β-CGの構造情報なしにPD発症とβ-CGの関連を明らかにしていくことは困難であること、また、β-CGの構造情報からその生理機能を予測して解析を進めていける可能性があることから、β-CGの精製および構造決定を優先的に進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
交付申請時に計上した予算内で、平成26年度に完了を予定していたステップ1(β-CG解析システムの立ち上げ)を完了させることができたため、未使用分を次年度に使用することにした。
|
次年度使用額の使用計画 |
交付申請書に記載した研究実施計画に従い、平成27年度請求の研究費を用いてステップ3(疾患発症の制御メカニズムへのβ-CGの関与の検証)、およびステップ4(疾患治療へのβ-CGの応用の可能性の検討)を行う。また、平成26年度未使用分の研究費を用いて、平成26年度に完了予定のステップ2(疾患モデル分析)、ならびに脳由来β-CGの精製・構造決定を進めていく。
|