研究実績の概要 |
本研究では、これまでに同定した血中の老化抑制物質が老化によるリンパ球の減少とミエロイド系細胞の増加を抑制するという結果を得ている(Aging (Albany NY). 2016,8(6)1259-75.)。そこで、今年度は免疫老化に着目し研究を進めた。 免疫老化は、おもにT細胞のレパトア変化による易感染性やワクチン効率の低下などを引き起こす。T細胞は胸腺内で前駆細胞と胸腺上皮細胞との相互作用により分化成熟し、二次リンパ器官へと移行する。老化により胸腺は顕著に委縮し、上皮構造の変化など微小環境が変化するが、微小環境の変化によりT細胞分化がどのような影響をうけるのかを検討した。①2年齢の老化マウス由来胸腺上皮細胞(CD45-,EpCAM+,MHCII+)の1細胞RNA Seq.解析を現在行っている。これにより老化による胸腺微小空間の遺伝子プロファイルの変化を明らかにする。②老化による胸腺微小環境の変化がT細胞分化に及ぼす影響を検討する為、若齢マウス(Ly5.1)および老齢マウス(Ly5.2)間でパラビオーシスをしたマウスより得た成熟T細胞(CD24low,TCRβhigh)画分について1細胞RNASeq.解析を行い、老齢マウス胸腺内に移入した若齢マウス由来前駆細胞が正常に分化するかを検討している。一方、老齢マウス同士のペアでは移入前駆細胞がほぼ無く、また移入した細胞はダブルポジティブ画分には存在せず、老齢前駆細胞は老齢マウス胸腺では分化出来ない可能性が示唆された。この原因についてもさらに検討をすすめている。③胸腺微小環境は9割以上が胸腺細胞で既に埋め尽くされ、パラビオーシスで移入する細胞は5%前後である。そこで、T細胞の分化異常により胸腺に空きスペースが出来るCD4依存的にCBFβ2を欠損したトランスジェニックマウスの作製し、同様にパラビオーシス実験を行う準備を進めている。
|