研究課題
本研究において、自然免疫で重要なToll様受容体(TLR)4の働きが、「コアフコース」というたった1つの糖の有無で大きく変わることを見いだしました。自然免疫を担うマクロファージではTLRが病原体を特異的に認識し排除することが分かっています。一方、インフルエンザウイルスなどの病原体は、宿主細胞の糖鎖を介して感染することが知られています。このように、TLRを介する自然免疫と糖鎖を介する感染機構のそれぞれが生体において重要な役割を果たしています。しかし、両者の関係を理解する「TLRを介する自然免疫での糖鎖の機能」は分かっていませんでした。本研究では、特にTLR4を介する自然免疫での糖鎖の役割を明らかにするため「コアフコース」という糖に着目しました。コアフコースはN型糖鎖の根元に付加されたフコースです。コアフコース欠損細胞を用いてTLR4のリガンドであるリポ多糖で刺激したところ、2種類のTLR4シグナル伝達経路のうちTRIF依存的経路を介するインターフェロン(IFN)-βの産生が特異的に抑制されることを見いだしました。これは、細胞表面に存在するTLR4/MD2複合体の細胞内への取り込みが抑制されたためと考えられます。TLR4、MD2、更にTLR4/MD2複合体の細胞内への取り込みに関わるCD14のコアフコース修飾の有無を調べたところ、CD14が修飾されていました。これらの結果から、CD14上のコアフコース欠損が、TRIF依存的経路を介するIFN-βの産生を特異的に抑制する可能性が示されました。これにより、コアフコースが自然免疫におけるTLR4シグナルを介した感染防御に必須であることが分かりました。今後、IFN-βの分泌機構を詳しく調べることで感染症や腫瘍に対する治療法の開発につながると期待できます。更に、他のTLRを対象に研究することで多様な病原体に対する効果の解明が期待できます。
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Glycobiology
巻: 27 ページ: 1006-1015
10.1093/glycob/cwx075
http://www.riken.jp/pr/press/2017/20170915_1/