細胞内の脂質代謝制御は生体の恒常性維持に対して極めて重要である。生体内の恒常性維持機構の一つに、細胞小器官リソソームにおいて細胞内構成成分を分解するオートファジーと呼ばれる機構が知られている。リソソーム内には脂質分解酵素であるリパーゼが含有されることが報告されており、その遺伝子欠損は重篤な脂質代謝障害を引き起こすことが知られている。近年、肝臓組織などにおいて、マクロオートファジーを介した細胞内脂肪滴成分の分解、すなわちマクロリポファジーの存在が報告され、その詳細な分子機構が徐々に明らかになりつつある。このことから、細胞内脂質の品質管理におけるオートファジー・リソソームシステムが注目されている。本研究課題では、我々が見出しつつある細胞内脂質分子を選択的に分解する新たなオートファジー・リソソームシステムの分子機構および生理学的意義を明らかにすることを目的に行われた。 今年度は、前年度に引き続き、我々が見出した新規脂質分解システムにおいて中心的な役割を持つリソソーム膜タンパク質の解析を中心的に行った。培養細胞系を用いた研究から、同分子と相互作用する因子を複数同定した。現在これらの相互作用因子の新規脂質分解経路における役割に関して解析中である。 さらに、新規脂質分解システムの動物個体レベルでの生理学的意義に関して、同分子の遺伝子欠損マウスをCRISPR/Cas9ゲノム編集システムを用いて作製し、脂質代謝などを中心に表現型を解析中である。 以上、今年度は、細胞内の脂質分子を標的とした新たなオートファジー・リソソームシステムのさらに詳細な分子機構および動物個体レベルでのその役割を明らかにすることができた。得られた研究成果に関しては、現在論文投稿準備中である。
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