研究課題/領域番号 |
26860204
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
原田 伸彦 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20431439)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 白血病 / 転写因子 |
研究実績の概要 |
近年の分子生物学的研究の進歩により、造血器腫瘍では実際の患者の血液細胞を網羅的に解析することにより染色体ならびに様々な遺伝子に変異があることが分かってきた。なかでも造血幹・前駆細胞の維持・分化に関わる転写因子GATA2の遺伝子に家族性の機能欠失型変異が骨髄単球性白血病を含むいくつかの種類の急性骨髄性白血病や骨髄異形成症候群などの患者の血液細胞からみつかってきた。しかしながら、GATA2変異によるこれらの病態発症メカニズムは明らかにされていない。本研究の目的は、我々がこれまでに作製した骨髄単球増多を呈するGata2遺伝子ノックダウンマウス(Gata2(fGN/fGN)マウス)をもちいて、GATA2の発現低下による骨髄単球性白血病発症メカニズムを解明し、GATA2遺伝子変異と多彩な白血球系疾患の関係性の一端を明らかにすることが目的である。これまでの解析から、Gata2(fGN/fGN)マウスの胎児肝臓から得られた造血幹・前駆細胞がin vitroコロニーアッセイにより野生型マウスの細胞より単球系コロニーの形成が多いことが明らかになっている。しかし、実際にどの分化段階の造血幹細胞または前駆細胞でこの表現型が起こるのかは不明なので、フローサイトメトリーをもちいて、単球系に分化する造血幹細胞(HSC)および前駆細胞(骨髄球系共通前駆細胞;CMP、顆粒球・単球系前駆細胞;GMP)を単離し、それぞれの分化傾向についてコロニーアッセイを行い、どの分化段階の造血細胞が影響を受けているかを検証した。Gata2(fGN/fGN)マウス由来のGMPでは野生型マウスと比較して単球・マクロファージコロニーの形成傾向が有意にみられたが、CMPではそのような差はみられなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでC57BL/6j系統の純系化のGata2(fGN/fGN)マウスを用いていたが、産仔数も少なく、高い胎生致死性を示すようになり、十分な解析個体数を確保するのが難しくなってきた。そこで、Gata2(fGN/fGN)マウスを多産の系統であるICR系統との混血種に変更した。これによって解析に十分な個体数が得られるようになったので、一時期の遅れを取り戻すことができた。この混血種マウスからのサンプルを用いた解析よりGata2(fGN/fGN)マウスの造血幹・前駆細胞の中でGMPの分画が野生型と比較して単球・マクロファージへの分化傾向を示すことがあきらかになってきた。また、この原因となる遺伝子について造血幹・前駆細胞の全体を用いた解析により、いくつかの候補となる遺伝子があきらかになってきた。
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今後の研究の推進方策 |
Gata2(fGN/fGN)マウスがC57BL/6jの系統では十分な個体数が得られなかったので、ICR系統との混血種にすることで、十分な個体数を得ることが出来た。この混血種マウスを用いた解析よりGata2(fGN/fGN)マウスの造血幹・前駆細胞の中でGMPの分画が野生型と比較して単球・マクロファージへの分化傾向を示すことがあきらかになってきた。今後はこれらの個体を用いてGata2ノックダウンの造血幹・前駆細胞が単球・マクロファージへの分化傾向をしめす、分子メカニズムをあきらかにしていく。とくに、造血幹・前駆細胞の中のどの分画がこの表現型の責任細胞となっているのか、またはその原因となる遺伝子発現についてあきらかにしていく。具体的には、このGata2(fGN/fGN)マウスの造血幹・前駆細胞の中でGMPの分画をフローサイトメトリで分取し、野生型と比較して発現に差のある遺伝子をあきらかにする。そのご、これらの遺伝子が単球・マクロファージへの分化傾向の原因と成っているかどうかについて検証を行なう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでC57BL/6j系統の純系化のGata2(fGN/fGN)マウスを用いていたが、産仔数も少なく、高い胎生致死性を示すようになり、十分な解析個体数を確保するのが難しくなってしまった。それにより、マウスをもちいてGata2(fGN/fGN)マウスの造血幹・前駆細胞の中の各分画における遺伝子発現の違いを野生型と比較して明らかにするために行なう予定だったマイクロアレイ解析等は次年度に行なうことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
Gata2(fGN/fGN)マウスがC57BL/6jの系統では十分な個体数が得られなかったので、ICR系統との混血種に変更することで、十分な個体数を得ることが出来た。この混血種マウスを用いた解析よりGata2(fGN/fGN)マウスの造血幹・前駆細胞の中でGMPの分画が野生型と比較して単球・マクロファージへの分化傾向を示すことがあきらかになってきた。今後はこれらの個体を用いてGata2ノックダウンの造血幹・前駆細胞が単球・マクロファージへの分化傾向をしめす分子メカニズムをあきらかにしていく。とくに、造血幹・前駆細胞の中のどの分画がこの表現型の責任細胞となっているのか、またはその原因となる遺伝子発現についてあきらかにしていく。このため、昨年度できなかったマイクロアレイ解析等をおこない、網羅的に責任遺伝子候補を解析し、RT-qPCR解析などで絞り込んでいく予定である。
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