研究課題
Bromodomain containing 8(BRD8)は大腸がんで発現亢進が認められ、抗癌剤の耐性に関与していることが示唆されている。BRD8はTat interacting protein TIP60アセチル化酵素複合体の構成因子であることや、カルボキシ末端側にブロモドメインを有することから、ヒストンのアセチル化リジン残基を認識(結合)し、制御タンパク質複合体をクロマチンに集積させ、クロマチン再構成や遺伝子発現の制御に深く関わっているものと推察される。以前の研究において、BRD8をノックダウンした大腸がん細胞の遺伝子発現プロファイルを取得し、BRD8によって制御される遺伝子群を同定した。本研究ではゲノムワイドにBRD8の結合領域を解析し、BRD8が直接制御に関わる遺伝子群を明らかにするためにChIP-seq(Chromatin immunoprecipitation coupled with high-throughput sequencing)解析を行った。BRD8が結合する領域を同定し、その近位に存在する遺伝子群を抽出した。現在、発現解析とChIP-seqから得られたデータを統合し、解析を進めている。また、BRD8のブロモドメインはヒストンのアセチル化リジン残基の認識に関わっているものと推察されるが、その機能は未だ不明である。そこで、BRD8がアセチル化修飾されたリジン残基に特異的に結合するかどうか検討するために、BRD8のリコンビナントタンパク質を精製し、ヒストンペプチドアレイを用いたin vitro結合実験を行っている。これらの解析を通じて、BRD8の機能および細胞内での役割を明らかにすることを目指す。
2: おおむね順調に進展している
BRD8のChIP-seq解析において、クロマチン免疫沈降に適した抗体をスクリーニングし、さらにこれまでのクロマチン免疫沈降の方法を改変することにより、BRD8の結合領域を網羅的に決定できた。また、BRD8リコンビナントタンパク質の精製においては、適切なバッファーの調整とゲル濾過クロマトグラフィーによってその凝集体を排除することができ、ヒストンペプチドアレイを実施することが可能となった。これらのデータを詳細に解析することにより、BRD8の新たな機能が同定できるものと思われる。
これまでにBRD8はTIP60アセチル化酵素複合体に含まれることや、TIP60はMyc、NFkB、E2Fおよび核内レセプター群など多くのがん化に重要な転写因子と結合することが明らかになっている。そこでSILAC(Stable Isotope Labeling using Amino acids in cell Culture)法を利用することにより、BRD8の結合タンパク質を網羅的に同定すること、またはBRD8が関与するTIP60のアセチル化標的因子を同定する。このプロテオーム解析によってBRD8の標的因子を同定し、BRD8の発現異常によるがんの発生あるいは進展メカニズムを解明する。加えて、BRD8の発現増加および抑制によるがん細胞の表現型の変化を検討する。
各試薬、消耗品の端数から生じた残余。
細胞培養関連の試薬・消耗品に計上する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) 産業財産権 (1件)
Methods Mol Biol
巻: 1263 ページ: 3-14
10.1007
Hum Genome Variation
巻: 2 ページ: 15011
10.1038