タンパク質がエクソソームへ取り込まれる際の選択性の仕組みを解明すべく、これまでの研究により選択的に脂肪細胞由来エクソソームへ取り込まれることが明らかとなっている脂肪酸合成酵素(FASN; Fatty Acid Synthase)を用いて解析を行った。申請書に示したように、FASNの8つのモジュールにそれぞれHaloタグが融合したタンパク質を発現できるベクターを作製し、293T細胞に過剰発現させることでエクソソーム内に取り込まれたモジュールを検索する実験を行うべく、ベクターを作製した。候補モジュールの同定を行い、申請者の米国留学につき、欠失変異体を用いた実験など、その後の実験は申請者の後任が継続予定である。また、脂質合成酵素群のエクソソームへの取り込みを制御する新規分子を同定すべく HaloTag-FASNの全長を過剰発現したHEK293T細胞から、Halo結合レジンにてHaloタグ融合タンパクを精製し、結合タンパク質の質量分析計での同定を試みたが、同定されたのはFASN分解産物のみであった。 また、研究を行う過程で、申請者は、これまで脂肪細胞由来エクソソームに含有されていると報告されてきたAdiponectinが、実は脂肪細胞由来エクソソームには含まれておらず、T-cadherin陽性エクソソーム(申請者は筋細胞由来と考えている)に結合する形で血液中に存在することを新たに見出した。この知見は科学誌に報告予定である。
|