研究課題
パーキンソン病原因遺伝子の機能解析を目的とし、ミトコンドリア機能維持に関わる遺伝子の機能解析を生体イメージングを含む解析手法で進めている。Vps35は、生体内小胞輸送に関わる遺伝子であり、パーキンソン病の原因遺伝子の一つである。最近の報告で、Vps35がミトコンドリアの機能維持に関わることが報告され、さらに神経の機能にも関わる可能性が推察されている。神経活動においてはミトコンドリアの働きが大きくかかわることから、Vps35の神経における機能解析を進めた。Vps35の発現量を減少させたショウジョウバエを用い、成虫脳のドーパミン神経の分泌能や幼虫運動神経のシナプス小胞量、リサイクリング効率を解析したところ、シナプス小胞動態全般の機能に異常が生じていた。そこで、生体イメージングや電気生理学的手法、電子顕微鏡を用いた超微細構造の観察を行い、詳細な解析を進めた結果、Vps35は、シナプス小胞のリサイクリングに関わることが示された。Vps35が直接シナプス小胞のリサイクリングを制御していることから、Vps35の発現量減少により生じる異常をシナプス小胞リサイクリングに関わる遺伝子の発現調節により回復させることができる可能性が推測できたため、既報のLRRK2やRab GTPaseを過剰発現させ、回復効果を解析したところ、シナプス小胞リサイクリングの亢進により、Vps35発現減少による異常を低減させることができた。本研究は、パーキンソン病原因遺伝子のVps35の神経活動に関わる機能を解明し、さらに、Vps35と関連する遺伝子を特定し、それらの発現調節による回復効果を示した。当初の目的であるミトコンドリア機能との関連は明確にできなかったが、本研究で得られた知見は、パーキンソン病病態理解と治療標的特定に大きく寄与すると考えられる。
3: やや遅れている
Vps35の機能に着目して研究を進めてきたが、当初想定していたミトコンドリア機能との関連より、小胞動態における機能に関する結果が多く得られている。電気生理や超微細構造の観察、生体イメージング、行動レベルでの異常を見出し、それを回復する分子の特定も進んでいることから、パーキンソン病原因遺伝子の機能解析と治療法樹立のための基礎研究としては、十分な貢献が期待できる。現在、論文投稿のための最後の実験を進めており、成果報告を予定している。また、他のパーキンソン病関連遺伝子との遺伝的相関についても研究を行える状況にあり、さらなる研究を行うことで、パーキンソン病関連遺伝子のネットワークの一部を明らかにできると考えている。
既に、実験のほとんどは終了しており成果報告に向けた残りの実験と論文作成の段階にある。また、本研究で用いた手法、得られた知見をもとに研究をより発展させることができるため、今後は、他のパーキンソン病関連遺伝子との相関に注目し、研究を進める。
論文執筆のための最後の実験がやや遅れたため、英文校正、投稿料が次年度使用になった。
執筆中の論文の英文校正と投稿料に使用する。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
AIMS Molecular Science
巻: 2 ページ: 461-475
10.3934/molsci.2015.4.461
PLoS Genetics
巻: 11 ページ: e1005503
org/10.1371/journal.pgen.1005503