研究課題/領域番号 |
26860222
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
石澤 通康 日本大学, 医学部, 助手 (30646542)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ビタミンD / 胆汁酸 / 核内受容体 / 肥満 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、肥満病態における胆汁酸代謝に、Vitamin D receptor (VDR)と腸内細菌がどのように関与するのかを明らかにすることを目的としている。平成26年度は、肥満病態における胆汁酸代謝に対するVDRの関与について研究を進めた。マウスに4週間高脂肪食を摂取させることで、体重増加、血中グルコース、トリグリセリド、コレステロール値の増加を認め、肥満病態モデルを確立した。野生型マウス及びVDR欠損マウスにおいて、総胆汁酸濃度の大きな違いはなかった。血漿、肝臓、尿、便より胆汁酸を抽出し、これまで当研究施設で確立されていたGC/MSによる胆汁酸組成解析に加え、LC/MSによる胆汁酸組成解析手法も確立した。血漿中及び肝臓中では、コール酸、タウロコール酸、これらの二次胆汁酸であるデオキシコール酸、タウロデオキシコール酸が検出され、マウスで特徴的な胆汁酸であるムリコール酸類(Muricholic acids; MCAs)を高濃度に検出した。一方、尿及び便中では、一次胆汁酸であるコール酸よりもデオキシコール酸濃度が高く、もう一種類の二次胆汁酸であるリトコール酸を高濃度に検出した。また、MCAsの濃度パターンは血漿及び肝臓中と異なるパターンをとった。 VDR欠損マウスの血中成分は高脂肪食摂取で野生型と同様の傾向を示したが、体重は増加しなかった。VDR欠損マウスの血中コール酸及びタウロコール酸濃度が野生型よりも高い傾向を認めたが、高脂肪食摂取による変化は認められなかった。 VDR欠損マウスにおける胆汁酸組成解析は、これまでに一部の研究室が、健康な状態でのプール胆汁酸組成を報告するのみである。高脂肪食摂取時における各部位(血漿、肝臓、尿、便)での胆汁酸組成変化の解析は世界初の知見であり、VDRの胆汁酸代謝への関与を研究する上で重要な情報の一部といえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度研究計画では、肥満病態における野生型マウス及びVDR欠損マウスの胆汁酸組成変化を比較し、肥満病態における胆汁酸組成変化の中で、VDRが関与するポイントを見つけることが大きな目標であった。この目標のために、マウスの肥満病態モデルの確立と胆汁酸組成解析の実験系確立が必要であったが、高脂肪食の選別とGC/MS解析からLC/MS解析へのプロトコール移行に時間を要した。更に、高脂肪食を摂取した野生型マウス及びVDR欠損マウスにおいて、胆汁酸組成変化のみられるタイムポイントを検討する為の時間設定が必要であったため、計画の達成が遅れている。既に高脂肪食摂取での野生型マウス及びVDR欠損マウスの血漿、肝臓、尿、便サンプルの回収は完了しており、これらの胆汁酸組成を解析することでタイムポイントを限定、追試等を行い確認していく段階にある。 VDRリガンドによって胆汁酸組成を変化させる試みについて、既に各種VDRアナログを開発し、マウスにおけるVDR活性化能までの評価を終えているが、VDRアナログの細胞レベルでのスクリーニングに時間を要したため、VDRリガンド投与時のマウスでの胆汁酸組成解析は遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
方策1、VDR欠損マウスでの胆汁酸組成変化について引き続き評価する。現在解析中の肝臓、尿、便サンプルに加え、より高濃度の胆汁酸を含み、胆汁酸代謝の変動を反映する胆汁中の胆汁酸組成解析を行う。VDR依存性の変化が認められない場合は、高脂肪食摂取期間を4週間から8週間程度まで延長する。 方策2、VDRリガンド投与による胆汁酸組成変化について評価する。VDRリガンドの投与条件は既に決定したので、一回投与、連続投与等で各部位の胆汁酸組成変化を評価する。 方策3、方策1及び方策2においてVDR欠損マウスやVDRリガンド投与による胆汁酸組成の変化が認められた条件に、抗生剤投与による腸内細菌の除菌処理を行い、胆汁酸組成変化を評価する。抗生剤投与条件の設定(抗生剤投与後に盲腸内容物、便中の16s rRNA量を評価)は、上記方策1及び方策2の胆汁酸組成解析と同時並行で進める。除菌条件の設定後、野生型マウス及びVDR欠損マウスに高脂肪食を摂取させ、血漿、肝臓、尿、便、胆汁中の胆汁酸組成解析を行う。抗生剤投与により、VDR依存性の変化に影響が出た場合、盲腸内容物又は便中の腸内細菌組成も評価する。
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