本研究課題は、肥満病態における胆汁酸代謝に、Vitamin D receptor (VDR)と腸内細菌がどのように関与するかを明らかにすることを目的とした。平成27年度は、肝臓、尿、便、胆汁中胆汁酸組成解析を行った。高脂肪食摂取は、肝臓中タウロαムリコール酸はVDR欠損によって増加傾向を示した。その他の胆汁酸にVDR欠損の影響は認めなかった。便中では、高脂肪食摂取によって非抱合型コール酸、デオキシコール酸、αムリコール酸、βムリコール酸が増加し、VDR欠損でこれら胆汁酸の濃度は増加傾向を示した。尿中では、抱合型胆汁酸の排出増加を予想したが、これに反し、高脂肪食摂取による胆汁酸組成変化にVDR欠損の影響は認めなかった。高脂肪食摂取は、野生型マウス胆汁中にもタウロコール酸の増加を認めなかった。 平成26年度より、野生型マウスは体重が増加し、VDR欠損マウスは増加しないことと、VDR欠損マウスでは血中タウロコール酸の増加を確認している。さらに、高脂肪食摂取は野生型、VDR欠損いずれの血中タウロコール酸濃度も減少させたが、VDR欠損マウスでの濃度は野生型よりも高値を示した。 本研究結果より示唆されることは、1. VDRは血中タウロコール酸の代謝に関与すること、2. 便中にタウロコール酸の脱抱合後のデオキシコール酸が増加したことより、VDR欠損では腸内細菌による脱抱合化反応が活発になったこと、3. タウロコール酸増加は膜型胆汁酸受容体を介して脂肪燃焼、体重減少にはたらいたことである。VDR欠損マウスの高脂肪食摂取時の胆汁酸組成解析はこれまでに報告のない情報として、今後の肥満病態と胆汁酸代謝、腸内細菌の関係性を詳細に知るうえで有用な情報となりうる。
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