研究課題/領域番号 |
26860223
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
簗取 いずみ 川崎医科大学, 医学部, 講師 (40454847)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 肺炎クラミジア / エフェクター / アポトーシス |
研究実績の概要 |
本研究では、偏性細胞内寄生性細菌の一つである肺炎クラミジアが、自身の感染場所を確保し続けるために、如何にして宿主細胞の生死を制御するかについて解析を行うものである。そのために、以下のことについて研究を行う予定であった。 ①アポトーシスを抑制する肺炎クラミジア分子の網羅的スクリーニング ②アポトーシスを誘導する肺炎クラミジア分子の探索 ①アポトーシス抑制分子の探索については、アポトーシス誘導因子の一つであるBaxを発現する酵母を作製し、それに肺炎クラミジア遺伝子を共発現させた。その結果、Baxによるアポトーシス誘導を抑制する分子の探索を試みた。また、Baxとは異なる経路によりアポトーシスを引き起こす方法として、過酸化水素を用いたアポトーシス誘導を行った。肺炎クラミジア遺伝子を発現する酵母に過酸化水素を作用させても、生存し続ける酵母の探索を行った。いずれの解析についても、スクリーニングを行った455遺伝子には、アポトーシスを抑制する遺伝子を見出すことはできなかった。これは、抑制因子がないこと、異なるアポトーシス誘導経路を抑制する因子があること、遺伝子が単独では機能せず、複数が協力してアポトーシスを抑制しているなどの理由から、今回行った方法では見出せなかった可能性がある。②のアポトーシス誘導因子の探索については、これまでの研究により、62種類の肺炎クラミジア遺伝子を酵母に発現させると、酵母に増殖抑制を示すことを明らかにしてきた。そこで、これら62種類の遺伝子に標的を絞り込み、これらの中でアポトーシスを誘導するために、酵母に増殖抑制が起きている遺伝子の探索を行った。その結果、複数の遺伝子を見出すことができた。 現在、2年目の計画であったこれらの分子の機能解析をすすめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、初年度において、肺炎クラミジア機能未知遺伝子の中で宿主細胞の生死を決定づける因子の探索を行うことを目標としていた。過酸化水素やBaxによるアポトーシスの誘導を抑制する因子のスクリーニングを肺炎クラミジア遺伝子455個について検討した。また、すでに酵母において増殖抑制を示す分子の中にアポトーシス誘導因子が存在するか否かについての解析を行った。その結果、複数個の分子が宿主細胞にアポトーシスを引き起こしている可能性を見出すことに成功した。さらにその中で標的分子を抽出し、その分子が宿主細胞へと移行するエフェクター分子であることを同定することができた。当初の予定通りのスクリーニングを終えることができ、また複数の標的分子を抽出することができたことから、おおむね当初の計画通りに進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
初年度において、アポトーシスを誘導する分子を見出すことに成功した。そこで、2年目は、それらの分子の機能解析を行う。まず、これらの分子がエフェクター分子であることの証明を行う。これには形質転換体を用いて検討し、宿主細胞への移行がみられたものについては、特異的抗体を作製して感染細胞での検討を続ける。エフェクター分子であるのことの証明ができたならば、感染のどの時期に産生される分子であるのか、宿主細胞へ注入された後に相互作用する分子は何か、どのような機能があるかについての解析を行う。 また、初年度にアポトーシス抑制因子を見出すことができなかった。これについては、アポトーシスの誘導方法を検討し、解析をすすめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度の研究成果を発表するため、平成27年3月26-28日に第88回日本細菌学会総会へ参加した。本学会参加に必要な旅費、および参加費を初年度から支払いをする予定であったが、年度末であったため、初年度内での支払いが間に合わず、次年度使用額へと算出された。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年3月26-28日に第88回日本細菌学会総会へ参加した際の、旅費および参加費として使用する。
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