研究課題
今年度は、ユビキチン陽性凝集体の形成責任因子であるSqstm1/p62 (以下、Sqstm1)を、生細胞内で内因性Sqstm1の動態を評価できるノックインマウス (Sqstm1-GFP KI マウス)を作製し、論文として発表した (Eino et al., JCB, 2015)。環境ストレスは、Sqstm1遺伝子発現誘導やオートファジーによるSqstm1タンパク質代謝によりSqstm1のレベルを変動させると共にSqstm1の細胞内局在も変える。このSqstm1の特性は、内因性Sqstm1分子の細胞内動態や役割を評価すること難しくしていた。そこで我々はC末端にGFPを融合させたSqstm1-GFPを発現するノックインマウス(Sqstm1-GFP KI)を作成した。環境ストレスの一つである亜砒酸処理はSqstm1-GFPの遺伝子発現を誘導し、Sqstm1-GFPタンパク質の細胞内に蓄積、GFP陽性の凝集体形成を促した。亜砒酸を除去すると、それら構造体はオートファジーにより分解された。さらに、Sqstm1-GFP KIマウス肝臓においてオートファジーを抑制すると、Sqstm1-GFP KIマウスは肝臓においてSqstm1-GFPを蓄積し、凝集体の形成を伴った肝障害を引き起こした。これらの結果は、Sqstm1-GFP KIマウスが生細胞、個体におけるSqstm1やオートファジー研究の強力なツールになることを意味している。研究期間全体として、選択的オートファジー発動時のNrf2活性が生体防御に働くことを初めて明らかにし、細胞はタンパク質恒常性の破綻に応答した複数の細胞防御機構を発揮できることを示した。また、ユビキチン陽性凝集体の形成責任因子であるSqstm1の内在性動態を評価できるノックインマウスを作製し、今後の強力な研究ツールを作製するに至った。
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Journal of cell science
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