研究課題
今年度の研究成果概要は以下の如くである。1.乳癌組織に浸潤する免疫細胞の意義の解析(免疫組織化学的検索)乳癌の進展に寄与する免疫細胞を明らかにするため、免疫組織化学法により乳癌組織に浸潤する免疫細胞を同定し、その意義を臨床病理学的因子との相関関係の解析から推定することを試みた。その結果、マクロファージの浸潤と腫瘍の増殖に相関関係が認められた。また、マクロファージはびまん性に浸潤するものと腫瘍の胞巣の辺縁に局在するものがあり、局在の違いが乳癌の進展に関わっているのかどうかを今後さらに検討していく予定である。2.マクロファージと乳癌細胞の共培養実験サイトカイン刺激による白血病細胞(培養細胞)のマクロファージへの分化に成功したので、乳癌培養細胞であるMCF-7細胞およびT-47D細胞との共培養実験を行ったところ、MCF-7細胞およびT-47D細胞におけるエストロゲン受容体の発現がマクロファージとの共培養により有意に抑制されることがわかった。さらに、pS2遺伝子の発現を指標としたエストロゲン受容体の転写活性の評価を行ったところ、共培養によりエストロゲン受容体の転写活性が抑制されることがわかった。これらの結果はマクロファージが乳癌細胞におけるエストロゲン作用を修飾しうることを示唆し、エストロゲン受容体の発現を抑制することにより乳癌内分泌療法の感受性を低下させる可能性が示唆された。次年度は乳癌細胞のエストロゲン受容体の発現抑制に関わる液性因子の同定を行うとともに、当初の計画のとおりエストロゲン応答遺伝子のプロファイルの変化を解析していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
免疫組織化学的解析によりマクロファージが乳癌の進展に寄与することを確認できた。また、次年度に予定されているマイクロアレイによるエストロゲン応答遺伝子の発現プロファイルの解析の準備が整いつつある。
エストロゲン応答遺伝子の解析は予定通り行う予定である。しかしながら、サイトカインアレイおよびELISA法による乳癌-マクロファージの相互作用に関わる液性因子の実験では十分な再現性が取れておらず、代替実験の必要性を感じている。マクロファージおよび乳癌細胞におけるサイトカインをコードする遺伝子の発現をマイクロアレイやPCRアレイによって評価することで打開を図りたいと考えている。
病理標本作製関連消耗品として10万円計上していたが、一部既製標本を使用することができたため若干の余剰が発生した。
次年度に予定しているPCRアレイによるサイトカイン遺伝子の網羅的解析に充てる。
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HISTOLOGY AND HISTOPATHOLOGY
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