研究課題
1.共培養によるエストロゲン応答遺伝子の発現解析昨年度行ったマクロファージの分化誘導の条件検討により最適化された分化プロトコールによりTHP-1細胞を分化させ、エストロゲン受容体陽性乳癌培養細胞MCF-7と共培養を行った。まずはじめに乳癌細胞におけるエストロゲン受容体の発現を検討したところ、エストロゲン受容体αの発現がM1、M2との共培養により有意に減少した。また、代表的なエストロゲン応答遺伝子であるTFF-1の発現を検討したところ、M1、M2との共培養により有意に減少した。2.免疫細胞が癌細胞の悪性度に与える影響の解析MCF-7とマクロファージを共培養したところ、M2マクロファージとの共培養によりMCF-7の運動能が有意に亢進した。一方、M1マクロファージとの共培養ではMCF-7の運動能に変化はなかった。考察マクロファージとの共培養により乳癌細胞のエストロゲン受容体およびエストロゲン応答遺伝子の発現が減少したことから、腫瘍内マクロファージは乳癌のエストロゲン依存性を減弱させる可能性が示唆された。また、M2マクロファージとの共培養により乳癌細胞の運動能が亢進したことから、M2マクロファージは乳癌の浸潤、転移に積極的に関与しているものと考えられた。一般的に、エストロゲン依存性乳癌よりもエストロゲン非依存性乳癌の方が悪性度が高く、予後不良であることが知られている。今回の検討により、腫瘍内マクロファージとの相互作用により乳癌細胞はエストロゲン以外の増殖経路を獲得し、その結果エストロゲン依存性の低下が引き起こされるものと考えられた。
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