研究課題/領域番号 |
26860237
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
目黒 史織 浜松医科大学, 医学部, 助教 (40724290)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | pericyte |
研究実績の概要 |
10%ホルマリン固定・パラフィン包埋ヒト病理検体に応用可能なpericyte特異マーカーを検討するため既知の16種類のタンパク質(αSMA、PDGFRB、CD90、CD146、NG2等)に対する抗体を用いヒト皮膚の免疫染色を行ったところ、どの抗体もpericyte特異的ではないことを証明した。新規pericyteマーカー検索のために、マウスpericyte、fibroblast、大動脈平滑筋細胞からRNAを抽出してマイクロアレイによる遺伝子解析を行い、新規pericyteマーカーの候補を抽出し免疫染色で検討したところ、myosin 1B(MYO1B)がpericyteに発現していたが、vSMCsとfibroblastsには発現していないことを確認した。 10%ホルマリン固定・パラフィン包埋ヒト皮膚材料において、MYO1Bと平滑筋マーカーであるhigh-molecular weight caldesmon(h-CD)を組み合わせることで、皮膚の血管壁細胞はMYO1B+ h-CD- であるpericyte、MYO1B+ h-CD+ であるmural cellsおよびMYO1B- h-CD+ であるvSMCに分類できることを見出した。 次に、ヒト皮膚perivascular tumors 49例(angioleiomyoma 21例、glomus tumor 23例、myopericytoma 4例、uncategorized perivascular tumor 1例)における腫瘍細胞のpericyteへの分化を検討した。MYO1Bとh-CDの免疫染色を行い各々の成分を半定量的に評価した。また、電子顕微鏡による観察を行った。その結果、angioleiomyomaはvSMCsの特徴を有していること(MYO1B- h-CD+)、glomus tumorは全例pericyteとvSMCsの中間の特徴を有する細胞(MYO1B+ h-CD+)から主に構成されているが、pericyte(MYO1B+ h-CD-)やvSMCs(MYO1B- h-CD+)の特徴を有する細胞も混在していること、uncategorizedとした腫瘍は腫瘍の約90%がpericyte(MYO1B+ h-CD-)の特徴を有する細胞から成り”pericytic tumor”と解釈されること、myopericytomaはpericyteとvSMCsの中間の特徴を有する細胞(MYO1B+ h-CD+)やvSMCs(MYO1B- h-CD+)から構成されていることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度で、我々は新しいpericyteマーカーとしてMYO1Bを発見した。 平成27年度では、10%ホルマリン固定・パラフィン包埋されたヒト皮膚材料において免疫組織化学的にMYO1Bとh-CDの発現をみることで、pericyte、vSMCs、およびその中間のmural cellsの分布を可視化することができた。また、同様の免疫染色と超微形態の観察により、ヒト皮膚のperivascular tumors(angioleiomyoma, glomus tumor, myopericytoma)における腫瘍細胞のpericytic differentiationを検討した。 一方、DsRedNG2トランスジェニックマウス(元来のバックグランドは C57BL/6、SJLおよびFVBの混合状態)をC57BL/6マウスにバッククロスすることを以前より継続しており、この1年間にて16世代目から20世代目を完成し、腫瘍の移植に使用することが可能となった。 以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
主に鼻腔や副鼻腔に発生する腫瘍に、“glomangiopericytoma”と呼ばれる腫瘍がある (かつてはsinonasal typeのhemangiopericytomaとよばれていた)。電子顕微鏡による観察ではpericyteの特徴を有しているとの報告がある。皮膚のperivascular tumorの時と同様に、免疫組織化学的にMYO1Bとh-CDの発現を検討し、鼻腔の“glomangiopericytoma”の特徴を明らかにしたい。結果によっては、MYO1Bは鼻腔の“glomangiopericytoma”を診断する際の良いマーカーとなる可能性がある。 DsRedNG2トランスジェニックマウス(元来のバックグランドは C57BL/6、SJLおよびFVBの混合状態)をC57BL/6マウスにバッククロスすることを約5年間行っており、現在までに20世代目を完成した(理論上、99.99%以上の遺伝子がC57BL/6由来である)。そして、DsRedNG2/C57BL/6において、C57BL/6マウスから発生した細胞株化された腫瘍細胞(メラノーマB16や大腸癌colon 26など)の皮下graft(同種移植)を作製し、腫瘍の発達とそれに伴うNG2陽性pericyteを含む血管新生を、生体組織透明化技術などの最新技術を使用することで三次元的に可視化することをまずは目標とする。
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