研究実績の概要 |
本年度は研究計画書に基づいてOR7C1の結合タンパクの分離・同定およびのOR7C1シグナルの解析のための予備実験を試行した。 OR7C1結合タンパクを同定するため、大腸がん細胞株SW480に、FLAGタグを融合した OR7C1遺伝子を強制発現させ、抗FLAG抗体を用いて免疫沈降を施行した。その結果、バックグラウンドが高く、銀染色での陽性バンドの同定が困難であった。このため、FLAG×3タグを持つOR7C1プラスミドを作成し、再施行する予定である。 また、これと並行して、OR7C1ポリクローナル抗体を用いた免疫沈降も実施した。銀染色施行前に免疫沈降ビーズのウエスタンブロット法による確認では、FLAG抗体を用いた免疫沈降よりもバックグラウンドが低いことが解った。今後、銀染色にて陽性バンドをマススペクトロメトリー解析を行う予定である。 OR7C1下流のシグナル経路解明の契機を得るため、各種インヒビターを用い、実験を施行した。これまでの結果から、OR7C1強制発現細胞では正常幹細胞あるいはがん幹細胞マーカーであるSOX2, Oct4, LGR5遺伝子の誘導がみられた。逆に、OR7C1分子の発現を siRNAにて抑制すると、同がん幹細胞マーカーの発現が抑制された。ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(以下PI3K)の阻害薬LY294002およびwartmaninnを添加により、OR7C1は影響をうけないものの、幹細胞マーカーの誘導は阻害されることから、PI3Kシグナルを介していると予想された。今後他の経路の阻害剤を用いた実験を施行継続予定である。
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