研究課題
メラノーマは抗癌剤抵抗性かつ予後不良の悪性腫瘍であり、ドライバー変異であるBRAFに対する分子標的治療薬の効果が期待されている。しかし、アジア人で高頻度に発症する末端黒子型のメラノーマではBRAF変異は低頻度であり、新規ドライバー変異の解析および治療法の確立が重要である。当教室ではメラノーマの網羅的変異解析から、KEAP1遺伝子のフレームシフト変異によるNRF2の活性化が増殖および薬剤耐性に関与することを見出した。本研究ではNRF2の標的遺伝子として発現が誘導されるNQO1がキノン系抗癌剤を還元・活性化することから、KEAP1変異を持つメラノーマが標準治療薬に抵抗性を持つ一方でキノン系抗癌剤に感受性である可能性が考えられた。メラノーマおよび非小細胞肺癌細胞株の比較からKEAP1変異を持つ細胞株ではNRF2およびNQO1の発現が高く、KEAP1変異を持たない細胞株でも一部NQO1高発現が見られた。キノン系抗癌剤である17-AAGによる細胞毒性を比較したところ、NQO1の発現と17-AAGの感受性に相関が見られた。また、NQO1阻害剤であるES936の併用により17-AAGへの抵抗性が見られた。NRF2はシスプラチンやダカルバジンといった酸化ストレスを伴う抗癌剤により活性化することが知られており、これらの抗癌剤と17-AAGを併用することでNQO1低発現のメラノーマに対して相乗効果が見られるか解析した。その結果、17-AAGおよびシスプラチン併用では細胞株5種類中4種類で相乗効果が見られた。以上の結果から、メラノーマに対する効果的な化学療法を選択する上で、NQO1がバイオマーカーとなりうることが示唆された。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
PLOS ONE
巻: 11 ページ: e0153181
10.1371/journal.pone.0153181