研究課題
本年度は手術切除標本及び細胞株を用いて、肺癌間質でのmicroRNAの発現異常及び機能を検討した。マイクロダイセクション後のマイクロアレイの結果から数種類のマイクロRNAが検討候補とされていたが、miR-199a-3p、miR-199a-5及びmiR-21について主に検討を進めた。miR-199a-3p、miR-199a-5pは、in situ hybridization(ISH)にて癌間質の線維芽細胞(cancer associated fibroblast, CAF)で高発現がうかがわれ、ティッシュマイクロアレイでの染色を終了し、現在評価中である。miR-21は、浸潤部及び非浸潤部の両方を含む肺腺癌89例を用いて検討を行い、癌細胞及びCAFのいずれも浸潤部で高発現が認められた。また、癌細胞ではなく、CAFでのmiR-21の高発現が肺腺癌患者の予後不良因子であると考えられた。細胞株での検討では、肺癌細胞株(A549)のconditioned media(CM)中で、正常の肺線維芽細胞株(MRC-5及びIMR-90)を培養すると線維芽細胞株のmiR-21発現が亢進することやmiR-21を過剰発現させた線維芽細胞株のCM中では、肺癌細胞株の増殖能及び浸潤能が亢進した。miR-21は肺線維芽細胞中での、大腸癌で報告されたCAF関連蛋白であるcalumeninの発現を増加させることが観察された。calumeninは肺癌細胞株の増殖能及び浸潤能を増加させることから、癌細胞及びCAF中のmiR-21とcalumeninが相互に働いて、肺腺癌における進展及び浸潤を促進していることが示唆された。以上の結果から、本研究では肺癌の発生・進展における癌間質でのマイクロRNAの異常発現及び機能についての一端が明らかにし、所期の研究目的に達したと考えられる。
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