研究実績の概要 |
細胞間接着分子であるNectin およびNectin-like molecule について膵神経内分泌腫瘍での発現や機能を解明することを計画した。平成26年度ではNectin、特にNectin3を対象として検討を行った。切除検体を用いた免疫組織化学では、膵神経内分泌腫瘍はNectin2、Nectin3の比較的高い発現を示したが、Nectin1およびNectin4の発現は低発現もしくは陰性であった。臨床病理学的検討では、膵神経内分泌腫瘍におけるNectin3の細胞膜での発現消失は、腫瘍径の大きな腫瘍、非機能性腫瘍、WHO grade G2-G3に関連があった。Nectin1, Nectin2, Nectin4の発現と各臨床病理学的因子に関連性はなかった。細胞株を用いた検討では、膵神経内分泌腫瘍細胞株であるQGP1を使用した。対照として膵腺癌細胞株であるPanc 1、MiaPaCa2、BxPC3を用いた。Real time PCRでは、QGP1はNectin1、Nectin2、Nectin3、Nectin4いずれも相対的に低発現または発現がみられなかった。そのため、Nectin3の発現が高かったBxPC3を用い追加検討を行った。siRNA法を用いNectin3の発現をノックダウンしたBxPC3細胞を作製し、wound healing assay, cell proliferation assayを行った。Wound healing assayでは、Nectin3ノックダウン細胞はコントロール群と比較し創傷治癒能が有意に高かった。Cell proliferation assayではNectin3ノックダウン細胞はコントロール群と比較し細胞増殖能が有意に高かった。以上の結果からは、Nectin3が膵神経内分泌腫瘍や膵腺癌の悪性化に関与することが示唆された。
|