平成26年度の検討では各膵神経内分泌腫瘍からサンプリングした1mm径のtissue microarray 切片によるスクリーニング検討を行ったが、平成27年度ではより大きい切片である通常の病理組織切片を用いNectin-3の免疫組織化学を施行し検討した。通常の病理組織切片を用いた検討でも、Nectin-3の発現低下はWHO gradeの高い腫瘍、ki67陽性率の高い腫瘍、非機能性腫瘍、腫瘍径が大きい腫瘍、病期が進行した腫瘍に関連があった。また、Nectin-3の発現低下は腫瘍再発期間が有意に短かった。これらの結果は、tissue microarrayでの検討を支持する結果で、Nectin-3の発現低下が膵神経内分泌腫瘍の悪性化に関与することを示唆した。 細胞株を用いた検討では、平成26年度にNectin-3の発現低下が細胞増殖能亢進と遊走能亢進に関与することを膵癌細胞株BxPC3を用い明らかにしたが、平成27年度では基底膜マトリクスに対する浸潤能について検討した。Nectin-3ノックダウン細胞と非ノックダウン細胞との間に、基底膜マトリクスに対する浸潤能に有意差はみられなかった。Nectin-3は基底膜マトリクスに対する浸潤には強く関与しないことが示唆された。 Nectin-3の発現とepithelial-mesenchymal transition (EMT)関連因子との関連性を調べるためにDNAマイクロアレイによる網羅的解析を行った。網羅的解析では、非ノックダウンBxPC3細胞よりもNectin-3ノックダウンBxPC3細胞で2倍以上の発現亢進がみられた遺伝子は111個、発現減弱があったのは91個であった。細胞接着またはEMTに関与する分子に関しては、Nectin-3ノックダウン細胞ではsnailの発現亢進とE-cadherinの発現減弱が僅かに確認された。
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