研究課題
深在性真菌症は、未治療の白血病や悪性腫瘍に対する化学療法中など高度の免疫抑制状態により惹起される予後不良な病態である。深在性真菌症のうち最多であったCandida感染症および糸状菌症として最多であるAspergillus感染症に関しては有効な薬剤の上梓により制御が可能となりつつある。一方で抗真菌薬は副作用が少なからず存在し薬価も高い。糸状菌症の原因となるFusarium感染症、Scedosporium感染症、あるいは接合菌感染症は有効な薬剤がないことから、治療戦略が異なる。本研究では、組織切片を用いた各菌種の確実な推定を行うことで、各疾患の発生動向調査を行うことを最終目的としている。本年度では深在性糸状菌症の中でも発生頻度の高く実臨床でも応用範囲が広いと考えられるAspergillus感染症と接合菌感染症の鑑別を主眼に研究を遂行した。菌塊内における菌糸相互の延長線の交点角を計測したところ、Aspergillusは接合菌と比較して交点角が鋭であり、かつ分散値が低いことが示された。この現象は、血管内における菌塊においても、肺実質における血管外の菌塊においても同様であった。このことは、Aspergillusに比して接合菌ではヒトの体内において菌糸相互において特定の方向に向かう指向性が弱いことを意味すると考えられる。これらの形態学的な相違は従前から知られていたが実測値の差異を示した研究はなく、両者の鑑別の一助になることが示唆された。
3: やや遅れている
実臨床の応用にもっとも寄与すると考えられるAspergillus感染症と接合菌感染症の鑑別に有用な知見が得られつつあり、現在論文公表に向けて活動している。当初の計画では2年で完遂予定であったが、論文公表のため延長申請を行ったため、進捗状況としてはやや遅れている。
蓄積された他菌種での検討を行い、全体として症例数を増やし、論文公表を行う。
病理組織切片を用いた純然たる形態学的検索のほかに切片から抽出された核酸を用いた分子生物学的手法を用いることが必要と考えられ、その検討を追加したため。
得られた結果に対して解析を行い、学会発表および論文公表を行う。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件)
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