研究課題
深在性真菌症のうちアスペルギルス症に有効な抗真菌薬が上梓され、実臨床において汎用されるようになった。斯様な現状で使用可能な抗真菌薬が限定されているムーコル症が、無顆粒球状態における白血病の予後を規定する極めて重要な日和見感染症として近年注目されている。ムーコル症に関する有用な診断法は知られておらず、除外診断に頼らざるを得ない。真菌の分離・培養検査は感度が高くなく、時間がかかる。また、菌種の同定はしばしば困難である。したがって病理診断や遺伝子補助診断等が必要となっている。さらに、血液系悪性疾患の存在など、全身状態が不良である症例が多く、生検等の観血的な検体採取はときに困難である。外科病理医として、組織切片上での真菌の同定および菌種の推定などに有用な情報を、提出された組織から可能な限りの情報を抽出する努力をはらう必要がある。我々はムーコル症とアスペルギルス症の症例を抽出し、大半の症例には背景に血液系悪性疾患が存在すること、菌塊内において交点角および密度に相違があることを見出した。また、発熱性好中球減少症におけるプロトコールCT撮像により、早期に肺病変が発見され、肺生検などによりムーコル症の確定診断が得られる症例が報告されてきている。これらの症例の中には、適切な抗真菌薬の投与や肺切除により社会復帰が可能となった症例が少なくない。我々はムーコル症の切除例を検討し、末梢血白血球数の推移により肺病変の形成に特徴的な所見を呈することを見出した。
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