研究課題
平成27年度は、SFTSにより死亡した剖検標本を対象として、前年度に確立したsevere fever with thrombocytopenia syndrome (SFTS) virus検出のための高感度in situ ハイブリダイゼーション(ISH)法を行った。SFTS剖検例の5/6例において、肝臓および脾臓の血球貪食マクロファージに一致して陽性シグナルが検出された。陰性だった1例は、陽性シグナルとヘモジデリンとの鑑別が困難だった。高感度ISH法と免疫染色の結果はいずれも一致した。Pre-embedding methodによる電顕ISH法において、100 nm前後のウイルス粒子が確認された。陰性コントロールにおける非特異反応は認められなかった。SFTS virus感染マウスでは、18F-FDG PET/CTで腸管に18F-FDGの蓄積が目立った。高感度ISH法によって、胃および腸管上皮細胞に多くの陽性シグナル(SFTS virus gemomic RNAおよびmRNA)が検出された。脾腫が確認されたものの、高感度ISH法において陽性シグナルはごく僅かしか検出されず、特徴的変化は認められなかった。mock感染マウスはいずれも陰性を示した。ダニ媒介感染症として2015年に新たに同定されたNairovirus属であるTofla (TFL) virusの高感度ISH法の確立にも成功した。TFL virus感染マウスでは、SFTS virus感染マウスの場合と同様に、18F-FDG PET/CTで腸管に18F-FDGの蓄積が認められた。高感度ISH法では、とくに胃および十二指腸の壊死性変化した上皮細胞に多くの陽性シグナルが確認された。食道では、一部の上皮細胞において散在性に発現し、大腸では、リンパ濾胞の胚中心に限って陽性細胞が認められた。mock感染マウスはいずれも陰性を示した。本法は、技術的に困難だったパラフィン切片における感染症病原体の検出を可能にし、日常の感染症の病理診断に応用可能な手法である。
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