研究課題/領域番号 |
26860252
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
中島 健太郎 徳島文理大学, 神経科学研究所, 助手 (20449911)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Laser Microdissection / LCM / リアルタイムPCR / 免疫組織化学 / 分子病理学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、臨床現場で多用されているホルマリンにより固定、保存された病理検体から、組織病理学的解析と細胞レベルでの分子病理学的解析を同時に可能にする新規手法を開発し、病因解析へ応用することである。この手法では、laser capture microdissection(以下LCM)と分子生物学的解析を組み合わせることで、組織病理学的解析によって特定した少数の細胞における遺伝子発現解析が可能となり、新たな分子病理学的解析手法の確立が期待できる。 平成26年度は、当初の計画通り「LCMおよび分子生物学的解析に最適な免疫組織化学的解析手法の確立」から着手し、RNAの分解を最小限にするための固定・免疫染色手法を検討し、概ね良好な結果が得られるプロトコールを確立することができた。また、カバーガラスの使えないLCMにおいて、染色後の乾燥による組織の収縮や細胞の破裂・脱落を防ぐことを目的として、水溶性ポリマーを用いた切片のコーティングの効果を検討した。その結果、顕微鏡観察が可能な屈折率と透明度を持つPolyvinylpyrrolidoneをベースに紫外線吸収能を持つベンゾフェノン誘導体を配合したもので良好な結果が得られた。しかし、組織の収縮が完全には抑えられていない点と、レーザーによる組織の切り取り効率が低下する点についてはさらに検討する必要がある。さらに、これらの手法を骨組織にも応用できるよう、脱灰処理を含む組織の固定・染色手法の検討を行い、こちらも良好な結果が得られた。「架橋されたRNAの抽出」については、①抽出したRNAをRT-PCRにより直接検出する場合、②ゲノムDNAを除去し精製する場合、③抽出からRNA増幅までを1チューブで連続的に行う場合の3通りに分け検討した。これまでに、RNA増幅を行わない2通りにつては試薬の最適化等により再現性よく安定的にRNAの抽出が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脱灰処理を伴う検体の固定・染色手法の検討という、当初計画していなかった検討項目を追加したため、RNAの抽出から増幅までを連続的に1チューブで行う手法の検討までは進めなかったが、逆に平成27年度に予定していた動物実験での本解析手法の有用性の確認を、これまでに概ね確立できている手法を用いて並行して行うことができたため、総合的には「おおむね順調に進展している」。と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのところ当初の予定通りおおむね順調に進展しており、今後の課題である「RNAの抽出から増幅までを連続的に1チューブで行う手法の検討」を進めつつ、今年度から開始することができた動物実験を用いた解析手法の有用性の確認をさらに進めていく予定である。RNAの分解を最小限にするための固定・免疫染色手法および水溶性ポリマーを用いた切片のコーティングについてもPolyvinylpyrrolidoneをベースにベンゾフェノン誘導体を配合したもので良好な結果が得られているが、組織の収縮が完全には抑えられていない点と、レーザーによる組織の切り取り効率が低下する点についてはさらに検討する余地があるため、これまでに確立できている手法をベースに改善・改良していく予定である。また、本研究テーマに興味を持った外部研究者からの共同研究の申し出もあり、当初予定していた中枢神経系に限らず、他の臓器での本解析手法の有用性も確認していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
「現在までの達成度」の欄に記したように平成26年度に予定していた「RNAの抽出から増幅までを連続的に1チューブで行う手法の検討」が平成27年度にずれ込んだため、それらに使用予定であった予算を次年度繰越としたため。
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次年度使用額の使用計画 |
予算執行の時期が遅れてしまっているが、全体的な研究計画についてはおおむね順調に進展しているため、次年度(最終年度)中には次年度繰越分も含め当初の研究計画通りの予算を執行する予定である。
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