欧米人では前立腺癌の全ゲノム/トランスクリプトーム等を統合的に解析した成果が続々と報告されている.一方,日本人では大規模な遺伝子異常解析の報告が欠如し,更に前立腺癌の発症機構には,欧米人(白人)と日本人の間で「地域差/民族差」があることがわかっている.本研究では日本人の前立腺癌について次世代シークエンサーを用いて準網羅的にがん関連遺伝子変異を解析し,更に病理形態学的,分子腫瘍学的解析を加えて,本邦前立腺癌に特徴的な発生機序の解明と,これに立脚した診断・治療の標的となる分子や情報伝達経路(pathway)の探索を行うことを目指した. 本年度は,前立腺癌に関与すると示唆される71種類の遺伝子のエクソン領域が解析可能なパネルを用いて,Ion PGMによる71種類の前立腺癌関連遺伝子の配列解析を20症例の前立腺癌凍結検体について行った. 本パネル解析で,71種類の遺伝子上に多くの遺伝子変異が検出された.得られた変異の中で,重要な変異か否かを判断するために変異の絞り込み条件の検討を行った.最終的にデータ解析はnon-synonymasな変異を抽出し,さらにCOSMIC,dbSNPや1000人ゲノムプロジェクト等の大規模なゲノム解析の結果を利用し,SNPを除いた.そして,論文検索などを行ってより前立腺癌において関連が高そうな変異を絞り込んだ. その結果,日本人前立腺癌に関係が深い変異を有する遺伝子を数種類見出すことができた.現在,見出された変異のバリデーションを行っている. 本課題は最終年度ではあるが、次年度も引き続き,見出された変異に対し,病理形態学的,分子腫瘍学的解析を加えて,日本人前立腺癌に特徴的な発生機序の解明と,これに立脚した診断・治療の標的となる分子や情報伝達経路(pathway)の探索を行う予定である.
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