研究課題/領域番号 |
26860254
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
藤岡 容一朗 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (70597492)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | エンドサイトーシス / カルシウム / ウイルス / FRET |
研究実績の概要 |
これまでにインフルエンザウイルスが自身のHA タンパク質を介して宿主細胞内のカルシウムシグナルを活性化し、宿主細胞のエンドサイトーシスを促すことで効率的に細胞に侵入する機構を見出している。本研究では、高速イメージング系を立ちあげ、インフルエンザウイルスが細胞に侵入する際の細胞応答を詳細に解析するとともに、インフルエンザウイルスが細胞内にカルシウムを流入させる分子メカニズムを探索した。H26年度は、ウイルス粒子を赤色蛍光色素でラベルし、FRET(Forster resonance energy transfer)を利用したカルシウムセンサーであるCameleonを発現した培養細胞に感染させ、ウイルス粒子の挙動とカルシウム濃度変化を同時にイメージングした。その結果、ウイルス粒子が細胞に吸着したスポット付近で局所的かつ微弱な細胞内カルシウム濃度上昇が観測され、続いて細胞全体でのカルシウム濃度上昇が観測された。さらに、これらのカルシウム濃度上昇はシアリダーゼ処理により抑制されたことから、細胞膜表面のシアル化されたタンパク質がウイルス感染依存的に細胞外から細胞内へカルシウムを流入させる候補分子であると考えられた。これら候補分子の阻害剤およびsiRNA等を用いて、ウイルス感染実験を行ったところ、インフルエンザウイルス感染依存的なカルシウム濃度上昇とウイルス感染が抑制された。以上から、本研究で同定した候補分子がインフルエンザウイルスによる細胞へのカルシウム流入と感染に関わることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目標は、ウイルス感染による宿主細胞応答の高速イメージングであった。現在までに、ウイルス粒子が吸着したスポット付近での微弱なカルシウム上昇と、その後の細胞全体でのカルシウム上昇という現象をとらえることができており、H26年度に行うべき課題はクリアしている。したがって、順調に研究が進展しているとの評価を下した。 さらに、H27年度の計画であったインフルエンザウイルスによる細胞内へのカルシウム流入を促す分子の同定に関しては、すでに現在までにその候補分子が同定できている。以上のことを総合的に判断して、当初の計画以上に進展しているという自己評価を下した。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに、インフルエンザウイルスによる細胞内へのカルシウム流入を促す分子の同定が済んでいるので、今後はこの分子のキャラクタリゼーションを行う。実際にインフルエンザウイルスHAタンパク質と相互作用するかどうか検討する。また、相互作用する場合は、立体構造解析や、その相互作用を阻害する薬剤のスクリーニングを行う。また、この分子にはその活性を抑制する阻害薬が存在しており、in vivoにおける効果を評価するために動物への投与実験も計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた実験が、予想よりも条件検討の回数が少なく済んだため、未使用分が99,046円発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
前述の通り、予想よりも実験が進んだため当初の計画を修正し、追加の実験を計画している。前年度より繰り越した99,046円は、その実験を行う上で必要な試薬等の購入にあてる。
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