研究課題
ウイルス感染症は科学技術が進歩した現代においても人類の脅威であり、特にインフルエンザウイルスは現行の対抗策では限界を迎えることが危惧されている。インフルエンザウイルスは宿主細胞の核内におけるRNA複製の際に高頻度で変異を獲得するため、抗ウイルス薬に耐性を有するウイルスの出現が問題となっている。そこで、我々はインフルエンザウイルスの細胞侵入経路を標的とした創薬を目指し、研究を行っている。これまでに、我々はインフルエンザウイルスが細胞内のカルシウム濃度上昇を介して、細胞内シグナル伝達ネットワークを活性化し、エンドサイトーシスを亢進すること、および亢進したエンドサイトーシスに乗じてウイルスが細胞内に取り込まれることを報告している。しかし、インフルエンザウイルスが細胞内カルシウム濃度を上昇させるメカニズムは未知であった。そこで本研究ではウイルス感染時の細胞内カルシウムダイナミクスを詳細に解析することで、その解明を目指した。高速イメージングを用いた観察の結果、ウイルスが吸着した部位の付近で局所的に一過的なカルシウム上昇が生じることが明らかとなった。また、インフルエンザウイルスが細胞に吸着することが細胞内カルシウム濃度の上昇に重要であることが明らかとなった。以上から、インフルエンザウイルスタンパク質と結合する細胞膜局在タンパク質を探索したところ、細胞内カルシウム濃度の制御に関与する膜タンパク質が同定された。さらに、この膜タンパク質を発現抑制するとインフルエンザウイルス感染が著しく阻害された。したがって、この膜タンパク質がインフルエンザウイルス感染に鍵となるの受容体タンパク質であると考えられる。現在は、この膜タンパク質とインフルエンザウイルスタンパク質との詳細な結合様式を解析中である。
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Mol. Biol. Cell
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Sci. Rep.
巻: 6 ページ: 21613
10.1038/srep21613
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http://cp.med.hokudai.ac.jp/research/analysis/