研究課題
JNKの上流キナーゼMKK7は肝細胞増殖や肝再生に関わっている可能性が示唆されているが,不明な点は多い.我々は肝特異的MKK7ノックアウト (KO) マウスを用い,MKK7 KOは四塩化炭素傷害後の肝細胞増殖に影響を与えないが,組織修復を遅延させることを見出している.今年度は,肝修復の程度を定量するために肝組織のfibrinogen免疫組織化学を行った.四塩化炭素投与2日後,小葉中心の壊死部は対照,MKK7 KOいずれも同程度に陽性となったが,4日後のMKK7 KOでは陽性部が対照に較べより広く残存した.さらに肝細胞でのMKK7の機能を詳細に解析するために,初代培養肝細胞をスフェロイド化し,コラーゲンゲルに包埋したところ,MKK7 KOでは樹枝状形態形成が有意に抑制された.この現象に関わる遺伝子を同定するためにマイクロアレイ解析を行い,MKK7 KOで発現が低下し,細胞運動にかかわる遺伝子としてtransgelin (Tagln) とplasminogen活性化因子 (uPA, tPA) が同定された.MKK7 KO肝細胞にこれらの遺伝子を過剰発現させると,コラーゲンゲル内での形態形成能が回復した.一方,これらの遺伝子をマウスの肝臓で過剰発現させ,四塩化炭素投与4日後の肝組織をfibrinogen免疫組織化学染色で比較したところ,TaglnやtPAを発現させた肝組織は対照と同様であったが,uPAを発現させた肝組織では優位に陽性部が減少し,肝修復が促進された.以上の結果より,MKK7 KOによる肝修復の遅延は,uPAの発現もしくは活性が低下することにより,細胞外マトリクスを介した細胞運動の低下が関与している可能性が示唆された.
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件)
Oncogene
巻: 印刷中 ページ: 印刷中