研究課題
自己免疫疾患は、体内の免疫系が組織の破壊と機能不全を引き起こし、「自己」物質に対する免疫反応を制御できなくなることで発症する。代表的な自己免疫疾患として関節リウマチ(RA)と全身性エリテマトーデスが知られており、近年これらの疾患ではmicroRNA (miRNA) がバイオマーカーとなることが報告されつつある。しかし、これらの変動しているmiRNAが病態形成や疾患活動性にどのような影響を与えているかはこれまでに詳細な追究はなされていない。今年度は、特にRA治療前と治療後で変動する血漿中miRNAがどのような作用をもたらすのか、に焦点を当て検証した。前年度までに、RAアバタセプト治療前・治療3カ月後で変動する血漿中のmiRNAをmiRNA array法を用いて同定している。特に発現変動(増加または減少)が大きくかつ有意確率(p値)の低いmiRNA群に着目し、これらが細胞へ及ぼす影響を検証した。すなわち、RA治療に伴い血漿中で増加したmiRNA群は炎症抑制作用を、逆に減少したmiRNA群は炎症亢進作用を細胞へ及ぼしうる予想した。RA治療によって増加した4種のmiRNA群(S-miRs)、および減少した4種のmiRNA群(P-miRs)をそれぞれRA滑膜線維芽細胞株にあらかじめ“treatment”し、TNF-α, IL-1β等のサイトカインに対する応答でこれらの機能を評価した。その結果、特にTNF-αの刺激に対して、S-miRsは炎症応答を抑制し、P-miRsは炎症応答を亢進することを明らかにした。よってRA患者血漿中に存在する、特に治療によって変動するmiRNAは明確な機能があることが示唆された。つまり、治療前に発現高値であったmiRNAについてはmiRNA antagonistによる阻害、治療によって発現増加したmiRNAについては発現誘導またはmimicの添加によってRAの改善につながる可能性が示唆された。
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Clin Rheumatol
巻: 36 ページ: 51-58
doi: 10.1007/s10067-016-3458-8.