研究課題/領域番号 |
26860266
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
仲矢 丈雄 杏林大学, 医学部, 助教 (80512277)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | KLF / 腸上皮 / 大腸癌 / 組織幹細胞 |
研究実績の概要 |
大腸癌は、罹患頻度が非常に高く重要な癌である。進行すると有効な治療法に乏しく日本のがん臓器別死亡率の男女合計3位、女性1位を占め、その数は年々増加傾向にあり、克服が課題となっている。腸の腫瘍は、幹細胞から生まれる。そのため、大腸癌撲滅という観点からも、腸管粘膜上皮の幹細胞制御と幹細胞からの発癌の分子ネットワークの解明は極めて大きな意味を持つ。 KLF5は、ES/iPS細胞の未分化能維持・誘導の根幹を担う。iPS誘導4因子(山中因子)の一つであるKLF4のかわりにKLF5を強制発現させてもiPS細胞が誘導される。KLF5は、正常腸管粘膜上皮においては、腸管幹細胞の存在する陰窩底部に強く発現し、分化が進むに従いその発現は弱くなる。 申請者は、ヒト大腸癌においてKLF5遺伝子座のゲノム領域の増幅とKLF5の発現増加、そして、KLF5が上記のように正常幹細胞を制御することも見出した。これらの結果から、KLF5が腸管幹細胞からの腫瘍形成を制御すると推察された。 Wnt/b-catenin経路活性化はヒト大腸癌で最も高頻度にゲノム異常を認める(92-97%)分子経路である 。実際、Lgr5+腸管幹細胞において変異活性化型b-cateninを誘導性に発現させると、急速な腺腫・癌の増大によりマウスは死亡した。しかし、申請者は、この変異活性化型b-Catenin誘導と同時に幹細胞でKLF5を欠損させると腫瘍形成が完全に抑制されることを見出した。この結果はKLF5が腸管幹細胞からの腫瘍形成のmaster switchとして機能することを示している。以上の研究成果を、Cancer Research誌にて発表した。 その後、腸管の幹細胞と腫瘍形成の根幹を制御する転写ネットワークの解明とその大腸癌治療応用のため、引き続きKLF5による腸腫瘍形成制御の研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスの作成など予定通り進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、マウスを用いてさらに解析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今後、蛋白質量分析など経費のかかる実験が控えており、それに対して支出をするために残金を残した。
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次年度使用額の使用計画 |
蛋白質量分析など経費のかかる実験に支出する予定である。
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