研究課題/領域番号 |
26860272
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研究機関 | 独立行政法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
矢部 茂治 独立行政法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 研究員 (40533716)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 疾患iPS / MODY / 糖尿病 / 膵β細胞 |
研究実績の概要 |
平成26年度はMODY-iPS細胞を膵β細胞へ分化誘導する系の構築を主に行う。本研究ではヒトiPS細胞 → definitive endoderm (DE)→ primitive gut tube (PGT)→ posterior fore gut (PFG)→ pancreatic progenitor (PP)→ beta cellという5段階の発生過程を模倣した5 stage protocolで分化誘導を行う。 1) Definitive endoderm(DE)への効率的分化誘導系:一般的にはWntとactivinを用いてDEへ分化誘導を行うが、この方法では分化効率にバラツキや株間の差が大きい事が分かった。そこで、1つの小分子化合物と3つの成長因子を組み合わせ、培地等も検討することで、新たな高効率DE分化誘導法を開発した(テストした全ての株で90%以上の分化効率)。
2) posterior foregut (PFG)における位置情報の最適化:膵β細胞分化誘導を行うとPFGにおける細胞の状態が予想以上に最終的な分化率・インスリン分泌・グルコース応答性に大きく影響している事が分かった。そこで位置情報に重要な因子である複数のFGFやRAを検討し新規合成レチノイドと2種類のFGFを組み合わせた分化誘導法を構築した。これらの改良したプロトコルにより膵前駆体マーカーであるPdx1、膵内分泌マーカーであるngn3の陽性率を90%以上にする事に成功した。
3)膵内分泌前駆体からbeta cellの効率的分化誘導系の検討:今まではグルコース応答性をもつ機能的膵β細胞を分化誘導することが難しかったが、複数の成長因子と小分子化合物を組み合わせる事で機能的膵β細胞分化に成功した。さらにこの過程で接着培養からスフェロイドの3次元培養にすることで、グルコース応答性を高めることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定していた1) Definitive endoderm(DE)への効率的分化誘導系、2) posterior foregut (PFG)における位置情報の最適化、3) Posterior fore gut(PFG)からbeta cellの効率的分化誘導系の検討などを含む膵分化誘導系の改良は順調に進んでおりグルコース応答性を持つ膵β細胞分化誘導に成功した。 またCRISPR/CasシステムによるMODY-iPSの原因遺伝子修復を行う予定であったが、当初予定していたvector系のワンステップ法による遺伝子修復したMODY-iPS細胞のスクリーニングが困難である事が分かったため、PiggyBacとCRISPR/Casシステムによる2ステップ法に切り替える必要が生じた。しかし全体としてはおおむね計画通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
1) 分化させたβ細胞の機能・遺伝子発現比較解析:平成26年度に検討した分化誘導系を用いMODY-iPSと修復MODY-iPS細胞から分化させた膵β細胞のインスリン分泌能(グルコース応答性)をELISAにより比較する。またマイクロアレイにより遺伝子発現の比較も行う。
2) 糖尿病モデルマウスの条件検討:Streptozotocine (STZ)の腹腔内注射によりβ細胞を破壊し糖尿病モデルマウスを作成するが、STZの量が少ないと血糖値が増加せず逆に多すぎるとマウスが死んでしまう。血糖値が400mg/dl以上の高血糖状態になり、かつマウスの生存率がよいSTZの量やマウスの週令を検討する。
3) 糖尿病モデルマウスを用いた生体内におけるMODYの病態再現および機能解析:MODY-iPSと修復MODY-iPS細胞から分化させた膵β細胞を糖尿病モデルマウスの片側の腎被膜下に移植し生体内でMODYの病態を再現させ、血糖値の推移を調べる。さらにマウスに糖を経口投与し血糖値およびインスリン量の変化によりグルコース応答性を調べ、生体内における分化状態・機能を比較解析する。また片側の腎皮膜下への移植を行うことで移植した細胞をそのまま摘出することが可能であるので(腎臓は2つあるので1つ摘出してもマウスは生存可能である)、移植した細胞を摘出して生着率・遺伝子発現を免疫染色やマイクロアレイにより比較解析する。この際に移植細胞を摘出したマウスにおける血糖値変化やインスリン分泌量を解析することで移植細胞の効果をより解析できる。
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