研究課題
IL-10発現による機能強化型 MSCs の高効率な移植条件の検討と治療効果の評価IL-10は炎症性サイトカインの産生を抑制する一方、抗アポトーシス効果を示すことから、骨髄間葉系幹細胞 (MSCs) の移植時にIL-10を利用することで、MSCs の生存率を上げるとともに、病態組織での炎症制御が予測され、結果として生着率の向上が期待できる。そこで、移植時に局所的IL-10の高発現を利用し、移植効率への影響を検討した。マウス下腿に移植する際、リコンビナントIL-10の反復局所投与を行った場合、短期的な生存効率の上昇をすでに確認しているため、長期発現が可能で安全性の高いアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を用いてIL-10遺伝子を導入した MSCs について検討した。In vivo イメージング解析の結果、IL-10発現による生存率および生着効率の向上が認められた。なお、血中濃度の増加は軽微であり、組織においてのみIL-10発現の増加を確認した。そこで次の段階として、筋ジストロフィーモデルmdxマウスにおける移植実験を予定しており、全身投与後の病態評価に向けて、呼吸機能、自発行動量、運動量測定における測定条件を確立し、評価項目の設定を行った。また、次年度予定しているイヌを用いた移植実験においても、拡大培養を開始し、局所移植においてIL-10発現MSCsの炎症を有する筋組織に長期間生着することが確認できた。
2: おおむね順調に進展している
年次計画において、マウスへの骨髄間質細胞(MSCs)およびIL-10発現MSCsを用いた筋組織内における移植効率の比較検討を予定していたが、おおむね計画とおりに実施できており、マウスにおける検討結果を示す事が出来た。ただし施設の異動に伴い、モデルマウスの個体復元を行うなかで繁殖維持が予定より遅れているため、全身投与や病態評価においては、次年度に実施する予定とする。
IL-10機能強化型MSCsを用いた移植効率の向上効果を免疫不全マウスにおいて確認出来たため、次年度はさらに筋ジストロフィーモデルマウスやモデル犬への移植実験を行い、高効率の移植条件を検討する予定とする。また、移植期間中に運動機能や活動量を解析し、移植における安全性および治療効果を評価する予定とする。
マウスの移植実験を推進していたが、使用する疾患系統マウスの繁殖維持が予想外に難航したため、当初の計画よりも実験規模を縮小せざるを得なかった。
マウスを用いた移植実験を引き続き予定しており、使用する疾患系統マウスの繁殖維持の見通しがついたため、当該年度にて実施出来なかった実験においては次年度に追加実験を予定している。当該年度にて未使用分は次年度の物品購入費に充てる計画である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件)
Mol Ther Methods Clin Dev.
巻: 3 ページ: 15059
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