本研究は、神経変性疾患に深く関与する神経炎症において、活性化ミクログリアから分泌される膜小胞、エクソソームが果たす役割を解明することを目的としている。最終年度は、前年度のプロテオーム解析の結果、LPS処理によりマウスミクログリア株化細胞であるBV-2細胞から分泌されるエクソソームで増加していることが見出されたヒストン分子について、ウェスタンブロット解析による検証を行うとともに、ミクログリア由来エクソソームの神経細胞障害性を検討した。 【プロテオーム解析結果の検証】 LPSを低・中・高濃度処理したBV-2細胞の培養液から超遠心により回収したエクソソームについて、ヒストン分子のウェスタンブロット解析を行った。その結果、プロテオーム解析結果と同様にヒストンH3分子の増加が確認された。 【ミクログリア由来エクソソームの神経細胞障害性の検討】 前年度に引き続き、LPSを低・中・高濃度処理したBV-2細胞の培養液から回収したエクソソームを神経細胞モデルであるPC12細胞に投与し、細胞障害性を検討した。また、ヒストン分子そのものによる処理も行い神経細胞に対する障害性を観察した。その結果、LPS処理した細胞由来のエクソソーム投与ではいずれのLPS濃度においても変化が見られなかったが、ヒストンで高濃度処理した細胞では神経細胞の死滅が観察された。 以上、今年度および前年度の実験により、ミクログリア細胞から分泌されるエクソソームに含まれるタンパク質組成はLPS処理により変化することを見出した。その中でも変化が大きかったヒストン分子については、そのものの投与では神経細胞障害性を持つことが分かったが、LPS処理したBV-2細胞由来のエクソソームを神経細胞に投与しても大きな変化は確認できなかったことから、分化後のPC12細胞、初代培養神経細胞に処理するなどのさらなる検討を要するものと考えられた。
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