研究課題
本年度はマウスマラリア原虫であるPlasmodium yoelii 17XNL株にGFPを導入したPyNL-GFPをC57BL/6マウスに感染させる実験系により以下の知見を得た。1.原虫寄生赤芽球の細胞表面には、CD8T細胞の認識するMHCクラスI分子だけでなく、細胞死を引き起こす受容体であるFasが表出していた。2.PyNL感染により、Fasに結合するFasLを表出した活性化CD8T細胞の割合が増加した。3.PyNL感染時にCD8T細胞を除去すると多くのマウスが感染抵抗性を失い死亡した。4.FasLの変異をもつgldマウスもPyNL感染抵抗性が弱く半数程度の個体が死亡した。5.感染マウスからCD8T細胞を分離し寄生赤芽球と試験管内で共培養すると、細胞表面のフォスファチジルセリン(PS)の表出がおきた。このPSの表出はアポトーシスを起こした細胞の特徴である。6.PSの表出を誘導するにはCD8T細胞と寄生赤芽球との接着が必要であった。7.CD8T細胞の代わりにFasL-strepという試薬を用いることでも寄生赤芽球にPSの表出を誘導できた。8.CD8T細胞ならびにFasL-strepによるPSの表出誘導は、感染赤血球では認められなかった。9.通常アポトーシスした細胞はマクロファージにより貪食されるが、PSの表出がよく起きている感染細胞程よく貪食されていた。10.PyNL感染時にマクロファージを除去するとすべてのマウスが死亡した。11.マクロファージサブセットのうち赤脾髄マクロファージが感染細胞をよく貪食していた。12.PSの受容体であるTim-4を抗体でブロックすると感染細胞の貪食が部分的に阻害された。以上の結果より寄生赤芽球に対する防御にはCD8T細胞とマクロファージが重要であることが示された。マラリア寄生赤芽球に対する研究は極僅かであり、今後の発展が望まれる。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度は、計画以上に研究が進んだことで次年度の使用予定の研究費を前倒し請求させていただいた、このお陰ですでに次年度の研究目標をある程度達成している。また本研究に関連する成果により論文2報を国際雑誌に発表した。
次年度は感染赤芽球上に表出しているFasに着目し研究を進める予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
eLife
巻: 4 ページ: 4
10.7554/eLife.04232
International journal for parasitology
巻: 44 ページ: 681-685.
10.1016/j.ijpara.2014.06.002
http://www.gunma-u.ac.jp/sb/sb.cgi?eid=1086