研究課題
サルモネラのAAA+プロテアーゼClpXPがファゴソーム内で分解している基質候補の探索を目的として、これまでに申請者は、基質の分解を途中で停止させ基質をトラップする系を構築し、トラップした基質サンプルを質量分析にかけ、256の基質候補を得ている。この中で、ファゴソーム条件下で機能すると考えられている転写因子・グローバルレギュレーターを5件(SsrB、PmrD、IscR、RelA、AcnB)、細胞分裂に関わる3つの候補(ZapC、BolA、SeqA)を選び、Hisタグ融合タンパク質発現系を構築した。これらの候補について、野生株とclpX欠損株における細胞内蓄積を比較したところ、PmrDとZapCについて、clpX欠損株における細胞内蓄積が見られた。さらに、タンパク質合成阻害剤を用いて、細胞内でのタンパク質安定性の変化を検討した結果、clpX欠損株においてPmrD及びZapCは安定化することを明らかにした。以降、2つの候補のうち、PmrDに着目して研究を進めた。PmrDは、サルモネラ菌体内でClpXPによって分解制御されていると考えられたため、次にin vitro分解実験の系を構築して、PmrDがClpXPによって直接分解されるかどうかの検討を行った。まず、Hisタグ融合PmrDの精製条件の検討を行い、90%以上の純度での精製条件を確立した。また、ここで得られた精製PmrDを用いて抗PmrD抗体を作成した。現在報告されている幾つかの基質分解条件で分解実験を行ったが、ClpXPによるPmrD分解はin vitroでは起こらなかった。CLpXPの基質の中には、アダプター因子と呼ばれる第3の因子と結合することで、自身の分解速度が大幅に上昇するケースが多数報告されている。PmrDについても、細胞内での安定性実験の結果と、in vitroの系での結果が食い違う理由として、細胞内でPmrDに結合してPmrD分解速度と量を調節する第3の因子の存在が考えられた。
予定していたトラップ実験からの候補遺伝子の絞り込みを行い、細胞内でClpXPにより制御されている遺伝子をその中から同定した。In vitro分解実験、相互作用実験の系も確立しており、予定していた解析を達成している。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Journal of Biological Chemistry
巻: 289 号: 47 ページ: 33001-33011
10.1074/jbc.M114.593749