研究課題
本研究では、ピロリ菌病原因子CagAが宿主細胞内において発揮する病原機能を試験管内で解析するため、チロシンリン酸化型組換えCagAタンパク質ならびにCskタンパク質の大腸菌発現系ならびに精製法を構築した。これらの精製タンパク質を用い、CagAがチロシンリン酸化依存的にCskと物理的に直接結合することを明らかにした。CagAはチロシンリン酸化部位である複数の異なるGlu-Pro-Ile-Tyr-Ala(EPIYA)サイトを持つことから、これらのチロシン残基をフェニルアラニン置換した変異型CagAを用いることにより、CagA-Csk複合体形成に最も強く関与するEPIYAサイトを同定した。さらにCagAとの結合依存的にCskのキナーゼ活性が亢進することを見出した。チロシンリン酸化CagAペプチドと全長CskとのX線結晶構造解析により、CagA-Csk結合部位の原子構造を明らかにした。一方、H27年度の解析から、チロシンリン酸化CagAペプチドはCskの活性を亢進するものの、その活性化能は全長CagAに比較して低いことを見出した。即ち、ペプチドを用いたCagA-Csk複合体の解析では実際のCsk活性化機構を反映できていない可能性が考えられた。そのためH27年度はCagAの組換えタンパク質調製法の改善に注力し、結晶化に有利となるよう、Csk活性化能を保持したまま可能な限りコンストラクト長を短くしたチロシンリン酸化組換えCagAを作製した。Csk本来の活性制御機構ならびにCagAによる活性亢進機構には未だ不明な点が多く、本研究で作製した均質なチロシンリン酸化組換えCagAタンパク質を用いてCskとの複合体の構造-機能解析を進めることで、今後その詳細を明らかにしていきたい。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件)
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 469 ページ: 1133-1139
10.1016/j.bbrc.2015.12.117
Crystal Growth & Design
巻: 16 ページ: 1565-1571
10.1021/acs.cgd.5b01692
Nature Microbiology
巻: 1 ページ: Art. No. 16026
10.1038/nmicrobiol.2016.26
Scientific Reports
巻: 5 ページ: Art. No. 15749
10.1038/srep15749