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2014 年度 実施状況報告書

感染ステージに応じて宿主生理機能を攪乱するA群レンサ球菌の新規分泌タンパクの同定

研究課題

研究課題/領域番号 26860285
研究機関京都大学

研究代表者

相川 知宏  京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (70725499)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワードA群レンサ球菌 / 分泌タンパク質 / 感染動態 / オートファジー / 細胞内生存
研究実績の概要

当該年度では、A群レンサ球菌(GAS)の感染動態を制御する新規分泌タンパク質の選定を試みた。分泌タンパク質の多くはシグナル配列を有していることから、GAS の全遺伝子配列からシグナル配列を有するタンパク質を検索した。このうち、局在が細胞外であることが予測された6つのタンパク質をコードする遺伝子の欠損株を作製した。
液体培地での欠損株の増殖速度は親株と変わらなかったが、ほとんどの欠損株において対数増殖期の生菌数が親株より少なかった。以上より、選定したタンパク質の多くがGASの培地中での生存・増殖において重要であることが示唆された。
次に宿主細胞において遺伝子欠損株の付着・侵入・生存率を測定した。6つの遺伝子欠損株のうち、5つの遺伝子欠損株の付着率、侵入率、細胞内生存率は親株であるJRS4株のものと同等であったが、42 kDa protein欠損株の細胞付着率、細胞侵入率および細胞内生存率は親株のものと比べて増加した。以上より、42 kDa proteinは本菌の細胞付着、侵入活性、細胞内での増殖活性を抑制していることが示唆された。
細胞質内のGASは、オートファゴソームよって取り囲まれたのち、オートファゴソームとリソソームの融合によって効率的に分解される。42 kDa protein欠損株に対するオートファジーの誘導能を評価したところ、オートファゴソーム形成率は、JRS4のものより減少した。また、形成されるオートファゴソームは、JRS4株のものと比較して巨大であった。一方、オートファゴソームとリソソームの共局在率はJRS4株感染時と同程度であった。以上より、42 kDa proteinは、オートファゴソームとリソソームの融合過程には関与せず、菌への効率的なオートファゴソームのリクルートに関連していること、オートファゴソームの成熟に何らかの影響を与えていることが考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的である「菌の感染動態を制御する新規菌体分泌タンパク質を同定する」ことについては、菌の付着・侵入・細胞内生存に関連し、かつ細胞内でのオートファジーの制御に関わることが予測される42 kDa proteinを見出すことができたことから、半分は達成できたと思われる。現在までに、本タンパク質の機能を明らかにした報告は世の中に存在していないことから、ここまでで観察された本タンパク質を介した種々の事象について、その機構・機序を明らかにすることができれば、その成果は大きなインパクトを持つと考えられる。そのために、本タンパク質の機能解析を詳細に行う必要があり、本タンパク質の分泌性の確認を行うとともに、オートファジーの誘導制御機構の解析を進めていく予定である。

今後の研究の推進方策

(1)42 kDa proteinが分泌タンパク質であるかの確認を行う。このため、マウスへの免疫によって本タンパク質に対する特異抗体の作製を試みる。GSTタグあるいはHisタグを付加した42 kDa proteinの精製はすでに終了していることから、これらの組換えタンパク質をマウスに免疫し、抗体を取得する予定である。また、42 kDa proteinが宿主細胞内に移行しているかを確認するため、百日咳菌由来のCyaAと本タンパク質の融合タンパク質を発現させた株を作製する。CyaAは真核細胞のカルモデュリン依存的にcAMPを産生することから、42 kDa proteinとCyaAの融合たん白質が宿主細胞へ移行した場合、宿主細胞内において、42 kDa protein依存的にcAMPが産生される。感染細胞内のcAMP濃度を測定するためのELISAアッセイを実施する。
(2)42 kDa proteinによるオートファジーの誘導制御機構についての検討を行う。42 kDa protein欠損株感染時のオートファゴソーム形成は阻害されているが、この現象が、欠損株がエンドソーム内に留まっているために起こっているのか、あるいは細胞質に脱出しているにもかかわらず起こっているのかを確認する。このため、エンドソーム膜の損傷時にリクルートされることで知られるGalectin3, 8の発現を観察し、エンドソームから細胞質への菌の移行を観察する。また、オートファゴソームの拡大化についてはRab7等のオートファゴソームの伸長にかかわる分子とリソソームの活性化を観察することで評価する。

次年度使用額が生じた理由

次年度では抗体作製を予定しており、マウスへの組換タンパク質の免疫を予定している。 このため、マウスの購入費および飼育費が必要である。マウスから得られた血清からの抗体精製にも少なくない経費が必要である。また、cAMPの検出に用いるELISAアッセイキットは96ウェルプレート1枚でおよそ6-8万円程度かかり、今年度の予算を次年度へ繰り越すことなくしては、研究費の捻出が困難であると考えた。

次年度使用額の使用計画

マウスの購入および飼育費、ならびに抗体精製費。cAMP検出用のELISAアッセイキットの購入費。これに加え、今年度と同様、細胞培養に用いる諸経費(培地、血清、プラスッチック類)、一般試薬購入費(主に抗体)、旅費、英文校正・投稿費を計上する予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Intraindividual variation in core microbiota in peri-implantitis and periodontitis.2014

    • 著者名/発表者名
      N. Maruyama, F. Maruyama, Y. Takeuchi, C. Aikawa, Y. Izumi, I. Nakagawa.
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 13 ページ: 6602

    • DOI

      10.1038/srep06602

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] New insights from infection-specific gene expression network.2014

    • 著者名/発表者名
      H. Abe, C. Aikawa, A. Nakabachi, M. Miyakoshi, F. Maruyama.
    • 雑誌名

      Nihon Saikingaku Zasshi

      巻: 69 ページ: 539-546

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Comparative genome analysis and identification of competitive and cooperative interactions in a polymicrobial disease.2014

    • 著者名/発表者名
      A. Endo, T. Watanabe, N. Ogata, T. Nozawa, C. Aikawa, S. Arakawa, F. Maruyama, Y. Izumi, I. Nakagawa.
    • 雑誌名

      ISME Journal

      巻: 9 ページ: 629-642

    • DOI

      10.1038/ismej.2014.155

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Rab17-mediated recycling endosomes contribute to autophagosome formation in response to Group A Streptococcus invasion.2014

    • 著者名/発表者名
      B. Haobam, T. Nozawa, A. Minowa-Nozawa, M. Tanaka, S. Oda, T. Watanabe, C. Aikawa, F. Maruyama, I. Nakagawa.
    • 雑誌名

      Cellular Microbiology

      巻: 16 ページ: 1806-1821

    • DOI

      10.1111/cmi.12329

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The staphylococcal elastin-binding protein regulates zinc-dependent growth/biofilm formation.2014

    • 著者名/発表者名
      M. Nakakido, C. Aikawa, I. Nakagawa, K. Tsumoto
    • 雑誌名

      The journal of Biochemistry

      巻: 156 ページ: 155-162

    • DOI

      10.1093/jb/mvu027

    • 査読あり
  • [学会発表] 細菌感染特異的オートファジーにおけるBeclin1の役割2015

    • 著者名/発表者名
      相川知宏、野澤孝志、中島慎太郎、今村拓郎、丸山史人、中川一路
    • 学会等名
      第88回日本細菌学会総会
    • 発表場所
      長良川国際会議場
    • 年月日
      2015-03-26 – 2015-03-28

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公開日: 2016-06-01  

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