研究課題/領域番号 |
26860287
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
油谷 雅広 金沢大学, 医学系, 助教 (20648810)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 細菌毒素 / ボツリヌス症 / 食中毒 / 感染機構 |
研究実績の概要 |
本研究では、宿主消化管内においてボツリヌス神経毒素複合体(以下、複合体)が毒素成分と無毒成分に解離するか否かについて解析を進めている。 平成27年度には、宿主腸管内において複合体が解離するか否かが毒素成分の活性に及ぼす影響について解析を行った。毒素成分が単独で存在する場合は宿主消化管内プロテアーゼの分解作用によって容易に失活するが、無毒成分との複合体として存在する場合は分解抵抗性を獲得し長時間にわたって活性を保持できることが知られている。弱アルカリ性緩衝液にエンドプロテアーゼを加えた人工腸液を調整し、複合体あるいは毒素成分のみを加え、37°Cで最長30分間インキュベートした。反応後の溶液を希釈してラットの腓腹筋に投与し、24時間後のラット後肢の複合筋活動電位を筋電計を用いて測定した。本神経毒素を未処理まま投与した場合、神経毒素の活性により弛緩性麻痺が惹起され、計測される活動電位は非常に微弱なものとなる。人工腸液で処理した複合体あるいは毒素成分を投与した各群ではvehicle投与群とほぼ同等の大きな活動電位が計測された。次いで、上記人工腸液に平成26年度までに同定した解離阻害因子を加えたものを調整して同様の実験を行ったところ、毒素成分のみの場合ではvehicleと同等の活動電位が計測されたが、複合体の場合で活動電位が有意に低下していた。この結果から本複合体は、弱アルカリ性環境下であっても解離阻害因子によって複合体形成を維持し、毒素成分がプロテアーゼの消化作用に対して抵抗性をもつことでその毒素活性を長時間保持したものと考えられた。 他方、平成27年度中には複合体と解離阻害因子の相互作用についても解析を行った。核磁気共鳴を用いて解析をおこなったところ、複合体と解離阻害因子が弱く相互作用していることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究代表者の所属変更に伴い、平成27年度の後半は研究を遂行することが困難であった。そのため、実験条件の細分化などが十分に行えていない。本研究課題に対する本来の助成期間は平成27年度までであったが、平成28年度までの期間延長を申請し、平成27年度に行えなかった実験を行う。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度後半に行う予定であった実験計画を進める。すなわち、宿主消化管内における神経毒素の毒素活性保持に関するシミュレート実験、および、核磁気共鳴による相互作用検出について、実験条件を細分化して追加実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の所属変更がとなり、研究環境を移転させるため、平成27年度下半期に研究を遂行することが困難な期間が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度内に計画していた研究を行うために使用する。
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